Story Reader / Affection / リー·超刻·その3 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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リー·超刻·その4

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リーの特殊な状況が考慮され、最近のグレイレイヴンは地上での任務を与えられていない

珍しく暇を持て余したルシアは再びトレーニングルームにこもり、リーフはスターオブライフへ手伝いに行っている。そして、自分はデスクワークに没頭していた

特化機体に意識の混乱が表れ、不安定な動きを見せている。リーをグレイレイヴンに留まらせるため、たくさんの報告書と書類を書いた。そして……膨大な資料を与えられた

「構造体修理通知書·最新改訂版」、「空中庭園·新版戦闘訓練ガイド」、そして……

「特化機体適応説明書――第5版」

……どれもかなり分厚い資料だが、文句を言わずに全部読むしかない

そういえば、昨日はあれ以来リーを見ていない。構造体は食事をする必要がないとはいえ、ずっと部屋の中にこもっていると気分も鬱々とするだろう

仕事を中断して、リーを探そうと立ち上がった時、いつのまにか後ろに立っていた構造体の存在に驚かされた

空中庭園の精鋭部隊の指揮官ともあろうものが、こんなに簡単に度肝を抜かれていいのですか?

人間とは脆いものですね

己が構造体であるという設定をどうやら完全に受け入れたようだ。リーはファイルキャビネットの陰に佇んでいた。青い瞳に、幼さとぎこちなさが浮かんでいる

30分ほど、ここに立っていました

彼は少し後ろに下がって、処理済みの書類の山を見て眉をひそめた

それは……特化機体の意識海混乱症状の観察報告書ですか?こんなにたくさんの報告書を書く必要があるのですか?

……それは、僕と関係ありますか?

……指揮する側のデスクワークは大変なんですね

僕は、謝りに来たんです

昨日、全ての書類に目を通し、そして一部が真実であることを確認しました

状況を正確に把握せず攻撃するなんて、どんな立場であれ、あまりにも非礼でした

最近、何度も謝られている気がする

今のリーは特殊な状況にある。だから、誰もそのことを責めたりしない

とにかく、僕は自分の約束に反して、指揮官に怪我をさせてしまいました

償いとして……代わりに任務を遂行します

自分の呆れた表情を、驚愕あるいは困惑と理解したのか、リーは静かに頷いた

「目標」を処理します

青いバイオニックの瞳が静かに光った。ただ「あなたの代わりにゴミをゴミ箱に入れます」と言っているかのようだ

指定の目標はありますか?あるいは他の……

目標がないのですか?特殊な目標も?

こちらの回答に、彼は困惑しているようだ

プライベートで依頼を受けたことはないので、目標を特定する流れについてはよくわかりませんが……

リーは考え込んで、「目標を特定する流れ」を思い出そうとしているらしい

……どうやら何か仕事を与えた方がよさそうだ

そうだ、「小隊任務」という日常業務がありますよね?

言葉に込められた疑問を察知して、リーは目を細めた――これもまた「今のリー」では見ることのない表情だった

彼は弾の入っていない銃を手に取って、素早く手の中で動かすと、一瞬にして武器をパーツごとに分解した

戸惑いを感じ取ったリーは、目をつぶって手の触感だけを頼りに、熟練した手つきで金属のパーツを武器へと組み立てていく――

これでどうですか?

一瞬で、銃は再び完成品としてリーの手の上にあった

基本的な操作です

今の構造体の体にまだ慣れていませんが、基本的な作戦能力は今より劣ってはいないと思います

リーを連れて、どこでその体力を消耗させようか考えた。任務用の端末を操作するふりをして、リーについてくるように手招きする

空中庭園の軍事基地の廊下、人工の太陽が懸命に熱を放出している。生態システムがすでに午後の時間に入ったことを示していた

うっ……

突然の光が眩しかった。構造体が眩しさゆえに目を閉じることはないが、まだ慣れていないであろうリーは思わず後ろに下がる

彼は目を閉じ慌てて手を伸ばすと、眩しい光を遮ろうとした

ところで……空中庭園は超光速宇宙移民艦のはず……どうして……

生態システムを維持するための人工太陽が、疲れることなく常時頭の上を行き来する。高い天幕の投影もまるで本物のように空を映し出していた

……

地球上でもそうそう太陽を見ることはありませんでした。はるばる暗闇の宇宙にやって来て、逆に人工の光を見るものでしょうか?

まったく、僕の仕事の性質にピッタリですよ

よくおわかりのはずです

資料にも明確に記入がありました。指揮官がご存知ないはずがありません

それとも、白昼堂々と活動する殺し屋を見たことがおありですか?

金銭のためです。マーレイの治療には多額の手術費が必要なので。彼の病状が悪化する前に、一定金額を集めないと……

僕はずっと暗闇の中にいても平気です。マーレイが明るい太陽の光を浴びられさえすれば……

それで十分なんです

突然その話題を振られて、リーは思わず硬化した

資料によると、当時マーレイには先天性の心臓疾患があった。リーの仕事の性質上、マーレイと頻繁に会えるとは思えない

確かにしばらく会っていません……彼の病態はどうなっています?

なるほど、マーレイをご存知のようですね……そうか、マーレイも空中庭園にいる!

構造体改造同意書の裏の契約書にありました。改造条件は、マーレイを空中庭園に送ること……

空中庭園には彼の病気を治せる医者がいたのですね……

なら、彼は今……

リーからこれほどたくさんの言葉が出てくるのは珍しいことだ。普段は表に出さないが、彼は常にマーレイのことばかり気にかけている

それで、僕たちは今からどこに行くのですか?

マーレイを心配しつつもさすがというべきか、リーは「任務執行」中であることを忘れてはいない

しばらく歩いて、端末が指示する位置に到着した

ここは……一体どこですか?

ドアのプレートからケルベロスの休憩室だとわかる。この時間に、マーレイがいるかどうかはわからないが

なんですって!?

それは、彼も……指揮官になったということですか?

彼はすぐさまドアを開けようとして、何かに怯えたように手を引っ込めた――

あら、誰かと思えば……お久しぶりね、親愛なるグレイ·レイヴン·指·揮·官~

扉が突然ぱっと開いた。そこには、目を細めながら扉の前のふたりを警戒している様子のヴィラがいた

彼女の視線に押されるように、リーはゆっくりと扉から離れて後ずさった。目配せで、こちらに誰なのかと訊ねてくる

異変を察知したのか、ヴィラは少し訝しむようにしてリーをじっと眺めた。リーはすぐに開けていた口を閉じると、普段と同じように振舞った

どういった御用かしら?グレイレイヴンに協力するような任務は受けていないわよ

そんな説明、信じると思う?基地の半分をぐるっと回ってわざわざ、前を通っただけと?

ヴィラの強い疑念から圧を感じて、思わず自分も1歩後ろに下がる。危うく、後ろで気配を消しているリーにぶつかりそうになった

うちの隊の指揮官をお探しなら――

あら、残念ながら不在だわ

指揮官というものはね、大事な時に役立てばいいだけなの。いつも側にくっついてる必要はないのよ

いつもべったり一緒にいるなんて、グレイレイヴンくらいかしらね

小隊の隊員は普段からともに協力する必要があります。作戦の時のみ連絡を取るような隊長と、どうやって戦闘中に協力できるのですか?

まるでその言葉は記憶に刻まれているかのように、リーはすらすらとヴィラに言い返した

意識が突然戻ったのだろうか?驚いてリーを見たが、彼の目には決意と信頼のみが浮かんでいる

フン、同じ目標さえあれば、自然に……

ヴィラは言葉を止めて、腕を組んだ

マーレイはね、滅多に基地にいないの。ここで彼を探すより、直接端末にメッセージを送った方が早いわ

それとも――他に何か目的でもおありかしら?

「ヴィラにリーの今の状況を絶対に悟られてはいけない」という信念の下、必死に合理的な理由をつけて、彼女の詰問から逃れた。ようやく安全な場所までやって来れた

ヴィラがもしこの問題に気付いたら……リーはおそらく、日が暮れるまで延々と笑われるに違いない

……ああいった状況ではああいう風に言い返すべきだと感じたんです

殺し屋でも協力し合うことはあります。なぜなら、この問題は当時……

ポケットに入れていた手がぎこちなく動いた。リーは意図的に目を逸らして、それ以上は話を続けなかった

とにかく、今の僕が指揮官に言えることは、あなたは僕が想像していたような隊長……指揮官だと思っているということです

ぎこちなく隊長を指揮官と言い換えて、リーはたいして気に留めていないふりをした

彼が元気だとわかったので、もう十分です

彼は目を細めて頭上の人工太陽を見ると、それ以上何も話さなかった

基地の端の道をしばらく歩くと、空中庭園の商業エリアに出る

黄金時代の大型商業施設ほどではないが、この商業エリアも空中庭園の発展とともに徐々に規模を拡大していた

煌々と照明が輝き、流線型の建物が並んでいる。リーは顔を横に向けて、その顔に差し込んだ光の影でうまく好奇の表情を隠していた

……ここは「任務」エリアですか?

街……目標地点と人物を特定してください。任務が完了したら、また合流します

アイスクリーム屋で代金を払うと、山盛りのアイスクリームが差し出された

アイスクリームを受け取って、リーにポケットに突っ込んでいる手を出すように求める

……どういう意味か、よくわかりません

欺くように、リーはずっとポケットの中に隠していた手を今度は体の後ろに回した

たとえ人工の太陽であっても、アイスクリームはゆっくりと溶けていく。アイスクリームが液体になり、コーンを伝って甘い模様を描きながら、ゆっくりと滴っている

……任務中に食事はとりません

そう言ってリーは少しためらったが、やがてしぶしぶアイスクリームを受け取った

彼が休憩室からずっと握りしめていたその拳が広げられた。そこには、小さなパーツが乗っている

彼の手の平、構造体の柔らかい人工の肌にくっきりと、その小さなパーツの跡が残っている――銃の中のバネだ

……甘いです

眉間にしわを寄せて甘さへの抵抗を示しながらも、リーはおとなしく自分の側に座って、アイスクリームを食べている

この味……久しぶりですね……嫌いではないです

丁寧に手の平を拭いて、リーはそっけない素振りでそこにあるバネを見た

このパーツは……

彼が握りしめていたバネはアイスクリームに取って代わられていたが、リーの機械に関する興味を逸らすことはできなかった

珍しく少し迷っているようだ。リーはもう一度、武器を分解して試したいのだろう。でも、どう切り出せばいいのかわからないといった風情だ

リーにバネをこちらに渡すように求めると、リーは少し意外そうな顔をしたが、すんなり従った

明るい天幕の下、人工の太陽は全てを優しい光で包み込んでいる……ベンチでクリーニングクロスを広げ、携帯していた予備道具を出し、素早く全てのパーツを分解した

携帯用の修理道具は使い勝手がよくなかったが、使い慣れたこの武器を分解しながら、小声でリーに全てのパーツの位置を説明するのには十分だった

最新の武器は、従来の武器と構造が違う。精密なパーツをつなぐために、複雑なパーツが必要になっている

組み立ては複雑だがその構造のお陰で、殺傷力と命中率を大幅に向上させることができる……

……記憶が正しければ、このバネはここにはまるはずだ

バネを所定の位置にはめ込むと、武器は再び完全に復元された

思わず、リーのかつての口調で訊いてしまった

端末の記録によると、これは確かに僕の武器です……

なぜ指揮官は……そんなに詳しいのですか?

優しい光の中、目の前で困惑しているリーと、かつて自分を武器庫に閉じ込めてさまざまな武器の構造を教えたリーとが、徐々に重なり合った

組み立ての手順をきちんと覚えましたか?

……ファウンスでは、戦場での緊急対応を学ばないのですか?

基本的な武器の使用、応急処置と治療だけ、ですか?

非常事態に陥って手元に新型の武器と修理用パーツがあっても、使い方がわからなければ、応援が来るまではもたないはずです

僕たちはそのような状況に陥らないよう、少しでも準備しておくべきです

何がおかしいんです?僕はこれでもかなり下限を甘く設定していますよ

ただ、僕とリーフの武器の基礎的な構造と組み立て方を教えているだけですが

共同作戦の状況を考慮すると……フン

厳しい目で側のストライクホークとケルベロスの予備武器を見て、リーは鼻で笑い、それ以上話さなかった

違う武器も使えるようにしておかなければ。そうすれば、今以上に自分で自分を守ることができますから

戦況は刻々と変化します。僕たちは必ず命をかけて指揮官を守りますが、ただ……

冷たい武器庫の壁が、構造体の青い瞳に銀色の星を映し出している。彼は目を伏せて、複雑な構造の武器の分解と組み立てを実演し始めた

僕は、指揮官にもっと自衛の手段を持っていただきたいんです