Story Reader / コラボ / 幻哭のエレジー / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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回想

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ニューオークレイ

ニューオークレイ――

おい、そっちの様子はどうだ?

あらかた始末できたぞ。今は戦場の後片付け中だ

コウモリ野郎、とうとう後先考えないくらいおかしくなりやがったのか?2時間以上ずっと攻撃してきやがって……この前は1時間弱くらいで落ち着いたってのに

どうだかな。空中庭園の部隊がタイミングよく来ていなけりゃ、今回は耐えきれてなかったかもな……

そう言や、聞いたか?

何をだよ?

コウモリどもの動きを止めた白い光のことだよ

大方、対異合生物用の新型閃光弾かなんかだろ?

俺が聞いた話だけどな、ある女の子が白い光を発したって噂だぞ。その光でコウモリどもの動きが止まったとかなんとか……

……冗談だろ

リカが起こした超常現象は多くの人に目撃され、すでに噂が広がり始めていた。中にはリカに対して好奇の視線を向ける者も現れている

短時間ではあるが手が空いたブリギットはリカに歩み寄り、できるだけ優しい声で話しかけた

リカ、私についてきてくれる?

彼女はリカの手を引き、近くのとある部屋へと案内する

リカはブリギットの誘導に従いながらも心ここにあらずといった様子であった。頭の中で断片的な記憶が次々と蘇っていく

鋭い記憶の断片が繰り返し現れ、波のように「現実」という名の岸へと押し寄せて突き刺さる

白衣を着た男が静かに近付いてくる。男は居心地が悪そうな様子でなにかを言おうとするが、言葉を飲み込んでしばらく黙ったままだった。それでもようやく、言葉を絞り出す

あのことは聞いた……グループのメンバーも心配していたよ

…………

部署からは休養の許可が降りたんだろう。調子がよくなってからまた仕事をすればいい。焦ることはない

……すまない。いつも仕事の話ばかりになってしまうな、よくないところだ。とにかく、言いたいのは……

少し休んだ方がいい、■■■

■■■は何も言わずに振り返ってリビングへと歩いていき、遺影となってしまったモノクロ写真を静かに見つめていた

来客を知らせるドア外からの呼び出し音が何度も鳴ったあと、静まり返る。しばらくすると指紋認証が行われてドアロックが開く音が響く

■■■、連絡もせずの訪問となってすまない。君の友人として、その……無事かどうかを、確かめたくてね

あれからもう3カ月は経つ。当然まだ傷は癒えないだろうが、そろそろ……

……■■■?

おい、私の話を聞いているのか?リカ

その問いがリカの視線を現実へと引き戻した

リカは周囲を見渡し、いつのまにか室内にいると気付く。隣には自分を連れてきたブリギット、中央の机に上品ながらも鋭い雰囲気の女性、その横には顔色の悪い男性が座っている

空中庭園、ホワイトスワン小隊の指揮官であるバネッサだ。こいつはバロメッツ小隊の指揮官、シーモン

ようやく口を利ける状態になったか、まったく……

要点だけ訊く。先ほどの白光だが、お前と異合生物にはどんな関係がある?隠そうとは思うなよ……包み隠さず話せ

リカの顔にはまだ少し虚ろな表情が残っており、上手く答えられない様子だった

私にも……よく、わかりません……

…………

バネッサは無表情でリカをじっと見つめていた。その視線があまりにも長く注がれたせいで、リカはこれから目の前の女性に尋問されるのではないかとまで思う

だが予想に反して、バネッサは端末を取り出してどこかと通信を始めた。するとまたリカの知らない男性が端末によって投影される

アシモフ、報告の続きを

この「リカ」の前でか?

そうだ、何も問題などない

……科学理事会の記録を調査した結果、トーマス·ヘルの資料を見つけた

トーマス·ヘル、元科学理事会二部のメンバーであり、ヴァレンティーナ女史の教え子だった男だ

資料によればトーマスの妻は遺伝疾患により病死、そして妻が病没した7年後にその娘のリカも……

14歳の時に同じく遺伝疾患で病死したとの記録があった

…………

病室の純白のカーテンが再び頭に蘇る。同時に激しい頭痛が襲いかかる

今までの疑念は徐々に確信へと変わり、ぼやけた光景も輪郭がはっきりとしていく

病室のベッドの上にいたのは……お母さん、なの?それとも……私……?

それはお母さんでもあり、私でもあった

血痕がついた白い掛け布団が何かを覆っている

それは当然リカだ

少し休んだ方がいい、トーマス

……その後、トーマスは科学理事会から離脱、2年後に行方不明となる……

通信中の男性の説明はもうリカの耳には入らなくなっていた

記憶が次から次へと湧き出てくる。そして、ついにリカを全ての始まりの時へと連れ戻した

非常事態を知らせる赤い光に包まれた実験室内にけたたましい警報が鳴り響き、床に倒れていたトーマスの目を覚まさせた

何が起きたのかを思い出そうするが、脳に走る痛みが思考を中断させた

彼はいまだ朦朧とする頭で、いくつかのおぼろげな光景を思い出す

鏡のように砕ける空間、そして間髪入れずに起こった爆発と……砕けた空間の中から現れた悪魔

悪魔は体の大半が欠落し満身創痍に見える。だが、その体が徐々に消え去ろうとしているにもかかわらず、不気味な笑い声をあげていた

その悪魔の体内からは亀裂の入った鏡が露出し始めている

悪魔は何事かを呟いたかと思うと、最後の力を振り絞り、自身のコアを目の前にいた唯一の人間であるトーマスに移し、取り憑いたのだ

鏡はトーマスに触れた瞬間に真っぷたつに割れ、片方は地面に落下していく

爆発に巻き込まれたトーマスの体は重傷を負っていた。意識を失う直前、トーマスの意識に浮かび上がったのは娘の存在であった

地面に転がった鏡の半分は白い光に包まれ、いつしかリカの姿へと変わっていた

……思い出した

私は、お父さんの執念から生まれた……悪魔……

!!!

やはりな……

ミラー·デーモンの本体は体内の鏡です。その鏡はこの世界に来た時にふたつに割れました

ミラー·デーモンの意識が宿る片方は、お父さんの体に……

そしてもう片方は私自身に……

さすがにその事実は……予想外だな

…………

面倒事は覚悟していたが、ここまでだとはな

嫌な予感が当たった。さて、これからどうしようか?

[player name]がバベルの塔から帰還するのを待つ。彼女からの報告によれば、こういう状況に対応可能な専門家の存在に言及していたはずだ

バベルの塔……

リカの表情が突然、強い意志を見せるものに変わる

バベルの塔に、行かせてください!

今はお前の戯言に付き合う暇はない

違うんです!割れた鏡同士には特別な繋がりがあるんです。私が存在してる限り、もう片方の残りの鏡も消滅させられないはず……!

つまりこのままでは、ミラー·デーモンを倒すことは不可能だと言うのか?

だから私はバベルの塔に行って、お父さんに会わなくっちゃ……!

……私たちだけで話す。部屋の外で待っていろ

……わかりました

リカが部屋の外に出て木製の扉が閉まると、中からは議論する声が漏れ聞こえてくる

アレをバベルの塔に行かせるだと?当然却下だ

だけど、あの子が話していた「鏡同士の特別な繋がり」を考えるとね……ミラー·デーモンを撃破するためには、バベルの塔へ行かせてあげるしかないんじゃないかな?

誰がその「繋がり」とやらが真実だと保証してくれる?あんな言葉、アレの妄言にすぎん可能性だって十分にあるだろうが

そうはいうが、仮にそうだとしても……

リカは近くの柱に寄りかかり、時折部屋の中から漏れ聞こえてくる議論の声に耳をそばだてていた

室内から時折漏れる言葉の断片に彼女の心は激しく揺さぶられ、期待と失望を行き来する

お父さん……

20分後、リカは議論が落ち着いた様子に気付き、話し合いの結論が出たのだろうと察した

木製の扉が再び開くと、バネッサがリカの前にツカツカと歩いてきて話し出した

チッ……

まったくもって不承不承ながら、お前のお望み通りブリギットがバベルの塔までエスコートすることになった。さっさと準備をしろ