Story Reader / 本編シナリオ / 40 よりよい明日 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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40-17 ヘブロン作戦

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霧は不気味に轟きながら吹き荒れ、瞬く間に拡がって視界を呑み込んだ

冷たい風が耳元で唸り、乱れていく思考に、膨大で混沌とした情報がまるで大波のように何度も押し寄せる

▅┛▃┛▄

助▄▁▅▃▄▁▆┛┛けて▁▄▁……

深紅の糸は歪んでねじれ、クモの巣のように全ての色を絡め取る。底の見えない暗闇の奥深くで呻吟が絶え間なく旋回し、奇妙なひそひそ声が響き渡った

なぜか痒さに突然襲われ、それは心臓をこするように広がって肺まで届いた。そのせいで何度か乾いた咳が出た

助け……助けて!!

煙が渦巻く中、血に染まった手がこちらを掴んでくる

私の子供がまだ中にいるんです……お願い!あの子を助けて!

喉を枯らしながら懇願する女性の声が霧を通して聞こえたが、それはどこかぼんやりしていて、なぜか胸の痒みが一層強くなった

咳き込みながら目の前の霧を払いのけると、血まみれの手がまだこちらの腕を強く掴んでいた

炉心の温度が高すぎる……ポンプのところに侵蝕体がいる。一緒にそこを通り抜けなければ

また別の手が伸びてきた。力任せに掴まれ、激しく咳き込んだ

周囲は血色のぼんやりとした闇に包まれ、腐敗した食道を歩いているようだった。1歩踏み出す度に無数の手が体を引き裂くようで、進むのがやっとだ

私たちはここだ!誰か、早く来てくれ!

どこも侵蝕体だらけだ……助けて!!

暗闇の中に次々と響き渡る悲鳴が、自分を前へ前へと駆り立てる

まるで重い枷を背負っているように、泥沼にズブズブとはまりながら歩く。突然、喉が激しく痛んで足がふらついた。肺からは熱を持った何かがこみあげる

血だ

パニシングに侵蝕され、体が徐々に腐敗しつつある

うっ……お母さん……

突然、ひと筋の光が差し込み、小さな姿が血塗れの世界の中央に現れた

足下の泥沼はまるで骨に繋がる肉のようだ。1歩踏み出すごとに手足はもちろん、骨の髄まで鈍い刃物で肉を削ぐような激痛が駆け巡る

少女は背を向けたままで、返事をしない

ゴキッ――

彼女の頭は切断されていた。首の皮一枚で繋がっただけの頭が、その重みでだらりと垂れ下がった

垂れ下がった頭がぐるりとこちらに顔を向け、不気味で恐ろしい笑みを浮かべた

――ギッ!

その時、無数の手が襲いかかってきた。彼らは難民でも消防士でもない――彼らは赤霧によって形作られた凶獣で、影の中に隠れた侵蝕体だ

ぐああっ!!

少女は腹を押さえ、目を見開いて驚いたように自分を見つめていた

軍人さん軍人さん……どうして……?

彼女の呼吸は弱まり、手の平の下から赤い染みがじわじわと広がり、白いシャツを染め上げていった

立ち込める濃霧が現実と幻想の境界を曖昧にし、自分を許されざる罪へと駆り立てたのだ

真実か虚構かを気にする余裕もなく体が先に反応し、さっと手を伸ばして、崩れ落ちそうな少女を引き寄せた

どう……して?

この瞬間、後悔と激痛に心臓を絞り上げられ、口から鮮血が噴き出し、それが少女の青白い頬にかかった

▅▃▄▁▆!

精根尽き果てたその瞬間、凶暴な鉄の爪が肌を引き裂き、目の前に迫ってきた――

ガキィィィンッ!

[player name]!

巨大な鎌が目の前を横切り、侵蝕体の腕を斬り落とした

その人その人から……離れなさい!!

彼女は憤怒の叫びを上げ、殺意をぎらつかせて巨大な刃を振るった。疾風のように舞う紫電が轟音とともに一閃し、敵の群れを横一直線に切断した

――ギィッ!

遠くの暗闇から再び咆哮が湧きあがり、敵が天井や壁、床から次々と押し寄せる。それは血のように赤い洪水となり、目の前の空間を呑み込んでいった

なぜ!?なぜあの子を殺したの?

目の前の濃霧はいまだ晴れず、血にまみれた腕は依然として体を引き裂き続けている

赤霧の破壊に直面すると、もう個人の意志など無力だ。ただの血肉でできた体では、どんなに抵抗しようが無駄だった

私の子を返して……あの子を返してッ!!

カラスさん

突然、温かい手の平が頬をポンポンと叩いた

私を見て

ぼやけた目が再びはっきりと焦点を結び、目の前の現実の危機に再び向き合わされる

初めての注射は少し痛いかもしれないけれど、我慢よ

何かが胸の中に押し込まれた

次の瞬間、口と鼻の詰まりがなくなり、新鮮な空気が大量に胸の中に流れ込んだ。暗く消えかけていた意識が再びまとまり、再構築され始める

そう、最後の1本

彼女は淡々と答えた

同時に、遠くからの震動がだんだんこちらに近付き、鋼鉄の波の中に、ぼんやりと銀白の色が見えた――

……

それはマルガリータの幻影だった

彼女が力なく腕を上げると、無数の鉄の獣たちが一斉に雄叫びを上げひと固まりとなって、自分とネイティアに向かって襲いかかってきた

どうやら……あなたに付き添えるのはここまでね

彼女は包帯を引き裂き、腰の赤霧遮断器を取り外すと、それをこちらの体に装着させた

薬剤が血流の中を駆け巡り、体中にひんやりとした痺れが広がる。その場に立ち尽くすばかりで、動かそうにも力がでない

たとえあなたでも……人間で彼女の相手はできないって、認めざるを得ないでしょう?

私がここで彼女を食い止める。あなたはひとりで進み続け、あの「黄金樹」を破壊する方法を探して。この災厄を終わらせるの

彼女は近付くと、手の平をこちらの胸にそっと押し当てた

あなたとドライブできなくて少し残念だけど、この短い時間の中で、私はもう十分面白い光景を見たわ

その直後、彼女は腕に力を込め、こちらをぐいと後ろに押し――

冷え切ったエレベーターシャフトに押し込んだ

もしまたチャンスがあれば、あなたの後を追うわ

彼女はこちらを見つめながら少し首をかしげ、初めて会った時のような淡い笑みを浮かべた

でも、もしそのチャンスがなかったのなら……

その時は、資料を外に持ち出して、人々に、そして世界に伝えてほしい――

私たちカヘティ人が、かつてこの世界に実際に生きていたことを

そう言って、彼女はボタンを押した

……さようなら、カラスさん

エレベーターの扉が完全に閉まると、ワイヤーが音を立てて落下し、全ての喧騒を遠くに追いやった

ふたりの世界はここで分断し、マインドリンクだけが唯一の繋がりとなった。希望と不安、このふたつの思いが、 同時にふたりの心へ双方向で送られる

<M>お互い</M><W>お互い</W>に、相手が命がけで自分にしかできないことをやっていること、数十年にわたるこの災厄を終わらせようと、 できる限りの努力をしていることをわかっていた

今この瞬間、どんなに無念で名残惜しくても、<M>ふたり</M><W>ふたり</W>は前に進まなければならない

近付かないで……皆の希望を奪わせはしない……

……

ネイティアは突然、かつて誰かが自分の前にこうして立ち塞がったことを思い出した

そして今、彼女はその火種をもっと遠く、もっと明るい場所へと手渡した

カラスさん、私は過去に留まる。でも……

あなたの物語はこれからも先に続いていくわ

彼女は1歩踏み出して鎌の刃をぶんと振り回すと、全てを打ち砕く決意を胸に、暗く果てしない深淵へと突き進んだ