大門周辺を除けば、他の市街地は依然として我らの掌握下にあります
しかし、空中庭園の力は確かに侮れません。ハハ、九龍で学んでいた頃を思い出しますよ
報告は以上です、陛下
ドゥロワが……惜しいことだ。優秀な者だったが
漆黒の廃墟に座すザルクは、闇と同化したような重苦しさを纏っていた。ホログラムの中でルメンツェフは尾で気怠げに床をなぞり、フェドールは石像のように突っ立っている
もとより戦場で予想外の出来事は起こるもの。三公の座にあった彼女なら、その覚悟もとっくにできていたはずです
彼女の後釜を据えればいい――そもそも彼女は亜人型改造の段階で、臨時で推挙されただけですし、その意味ではソフィアのためにすべきことは果たしたでしょう
その言葉は非常に軽く、隣のフェドールの沈黙とまるで同じだった。ふたりにとって同志の戦死など「埋めるべき空席が増えた」でしかない。悲しみなど微塵も感じられなかった
負けたくせにいやに楽しそうじゃない。死んだ女のことはともかく、あのクジラたちは大規模破壊兵器なんでしょう?そんなものを相手に渡して、本当に問題ないの?
確かに、何体かのバイオニッククジラは敵の手に落ちるだろう。だがこちらの戦力が減るわけではない。ましてや、クジラはやつらにとって何の役にも立たん
強がるのは誰にでもできるけど、ああやって奮起し、反抗する人間って本当に面白いわね。特にあのグレイレイヴン指揮官
[player name]を……知っているのか?
知り合いの知り合いってところ。今日少し見ただけで興味が湧いたわ。氷皇、あいつを殺すなと手下に言っておいて
……
ルメンツェフ、フェドール、戦いを続けろ。次の報告では戦果を聞かせてもらう
承知しました。すぐに動きます
御意。では私は敵の総帥に挨拶するとしましょうか
ホログラムがスッと消え、宮殿内には天井ドームの割れ目から漏れるひと筋の光だけが残った。だがそれも床に届いた途端、濃い闇に呑み込まれた
戦場はあなたたちの舞台よ。どう遊ぼうがお好きにどうぞ。だけど、私はもう長い間待ちぼうけなの。ブラックボックスデータはまだ処理できてないの?
もう少し時間が必要だな。最終マスターユニットは精密な代物だ。だからこそ、そちらのその程度の時間を惜しむべきではない
……惜しむわよ。時間というものは、獅子の子を雄獅子に育てることも、雄獅子を骨になるまで喰い潰すこともできる。どんな強大な者も、時間には勝てない
まさか昇格者の口から、命を惜しむ話が聞けるとはな
私が命を惜しまない人間なら、昇格者になんてなっていないわ。フン……あなたはどうなの。利欲にまみれたタイプでもなさそうだし、なぜ世界征服なんて考えたの?
宮殿の空気が静まり返る。ただ風だけが割れた窓の隙間から吹き込み、床の灰を巻き上げていた
ザルクはゆっくりと顔を上げ、漆黒の天井を見つめた――まるで、朽ちたレンガの向こうに何年も昔の星空を見ているかのように
私はかつて宇宙飛行士だった。大気圏から飛び出して、宇宙を探索する――それが自分の天命だと信じていた
その後訓練を全て終えた私は、ロケットとともに雲を突き抜けた。無重力と金属の冷たさを感じて私は船窓に近付いたが、そこで見たのは星空ではなかった
私が見たのは、完全なひとつの地球だった
当時の船窓の冷たさを今でも覚えているかのように、ザルクの指先が小さく震える
その衝撃は私を窓に張りつかせ、涙を流させた。皆は「綺麗だ」と騒いでいたが、私はただただ――地球はこれほど「ひとつ」だったのか、と考えていた
地上に帰還したあと、私は仕事を辞め、僅かに私の身に流れる「血統」が幸いして軍人となった
更に、自ら望んで高位の改造実験に参加した。血管に薬剤を流し込む灼けるような痛みや、切り裂かれるような神経接続の苦痛にも耐え……最終マスターユニットとなった
目を閉じたザルクは、暗闇の中に無数の人影が浮かび上がったように感じていた。それは「世界統合」という信念を掲げ、ともに戦った数多の戦友の影だ
彼と同じく、心から「世界統合」を信じて戦った戦友たち
ハハッ、そんな些細なことから世界征服を?まったく、まだ思春期真っただ中って感じね
星を掴みたいと思うのは子供だ。だが私は……全ての海岸線が繋がっているのを見た。そして、我々がその上に刻んだ争いの傷も見た
地球はあまりにも完全だった。地上のあらゆる境界線が滑稽に見えるほどにな。地球は生まれながらにひとつなのだ。ならば、私は人類が描いた裂け目を消してみせよう
