Story Reader / 本編シナリオ / 38 トゥルーインファレンス / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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38-19 引力

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確認済みだ、彼は自殺した

ハセン議長の状況は?

今、傷口の緊急処置をしていますが、ハセン議長はまだ昏睡したままです

くそ、内出血じゃないだろうな……?

扉が猛然と開き、最高司令部に常駐する医療スタッフがオフィスに駆け込んできた

負傷者はどこに?状況は!

ここです。外傷はすでに緊急処置を施しました

迅速な処置に感謝します。後は私が――

待て

その手が、動きかけた医療スタッフの手を止めた。彼女は相手の口調が場にそぐわない冷たさであることに気付いた

これからの全ての行動は我々粛清部隊の「保護」下で行う。特殊な状況なので理解いただきたい

ええ……?

口では申し出ている風だが、その態度は強引で拒絶を許さないものだ。説明もなく疑われているような態度に、こう言われた相手は直情的な反応を示した

――ちょっと、一体どういうつもり?私が議長に危害を加えるとでも?

そうではなく、特殊な状況下ならば慎重に行動せざるを得ないだけだ

あらゆる潜在的脅威を排除する必要がある

他のふたりの粛清部隊メンバーは、黙々と立つ位置を調整している

ちょっと、それはあまりにも杓子定規でしょう!なんであれ、ハセン議長の体を検査するのが先のはずだ!

……だそうだ

時間を無駄にしてくれて、どうも!

医療スタッフが素早く前に出て診察を始めた

脾臓破裂、失血性ショックによる昏睡。現状では有効な治療が不可能で、ただちにスターオブライフへ搬送する必要があります!

彼女は携行品の中から折り畳み式担架を取り出し、それを広げるとハセンの傍らに置いた

手伝って!

イサリュスとクロワがハセンを担架に移し、しっかりと固定した

移動する時は……

ゴオ――ン――

どこか遠くから、ここにまで届くほど大きく低い轟音が伝わってきた

続いて、時間は短いが激烈な振動が起こった

その振動で倒れそうになった医療スタッフを、とっさにクロワが支えた

テーブルの上のカップがコーヒーをぶちまけながら床へと落ちた。ゴンシンの車椅子も倒れ、その体がボロ人形のように投げ出されたが、もう彼を気に留める者はいない

何が……起きたんだ……

更に耳障りな警報音が空中庭園全体に鳴り響いた

空中庭園が落ちてる!?嘘だろ!

……してくれ

恐らく先ほどの振動で一瞬、意識が戻ったのだろう。声がした

議長!

頼む……[player name]に……あの指揮官あの指揮官に連絡を……ドールベアを……見つけに行ってくれと

ハセンは明らかに重傷を負っている。だが手首を掴むハセンの力の強さに、クロワは痛みを覚えたほどだった

勝敗は全て……この一手に!

その言葉を言い終えると、ハセンはまた耐えられないように、再び意識を失った

一同は互いに顔を見合わせた

まず議長をスターオブライフに送り、道中でグレイレイヴン指揮官に連絡する

その時、ハセンの端末から音が響いた

…………

クロワが端末を取って通信に対応した。相手はニコラだ

クロワ、それにイサリュスも?議長は?

最高司令部内でゴンシンが議長暗殺を謀っただと!?こんな時に!?

一同は何も言葉が出ず、ニコラの次の発言を待っていた

…………

[player name]……ドールベア……

ニコラの額の青筋は絶えずビクビクと脈打ち、彼の怒りのほどを物語っていた

彼は深く息を吐き、心を落ち着かせた

イサリュス、ハセン議長をスターオブライフへ移送だ

議長の生命の安全を最優先目標とし、即刻出発せよ

承知しました

粛清部隊のメンバーはすぐさまハセンの担架を運び出した。ニコラは通信を終えると、厳しい表情で足早に車両に乗り込んだ

司令部へ戻れ

居住区から最高司令部へ向かう専用車内にいるニコラの表情は、普段通り冷静で隙がないように見える

しかし、腕を叩く指の動きが、彼の不安を表していた。これは彼が滅多に見せない、考え込みや焦りを表す癖のようなものだった

彼は現状をよく理解していたが、かといって慌てた様子は見せられない。空中庭園で誰かが指揮を執る必要がある

起こりうる全ての状況を頭の中でシミュレーションした。最良と最悪のケース、損切りと損失増加を計算し――生存と失命を天秤にかけ、利害を考慮していた

アシモフ専用回線の端末の着信音が鳴る。周囲の警報音の中で、それはひときわ心地よい響きだった――ニコラはそれが希望の知らせであることを願った

状況は?

パニシングが空中庭園にどの経路で到達したかは不明だが、標的は明らかにゲシュタルトだ

ゲシュタルトは防御とセルフチェックを即時起動、シャットダウンしてパニシングの汚染を阻止した。俺も電力供給を遮断した。当面この方面からの脅威は心配しなくていい

だが空中庭園の急降下はすでに始まっている。状況は今も楽観視できない

ゲシュタルトがオフラインの状況では、エンジンは手動で停止させる必要がある。強制的にアルゴリズム設備を起動すれば、再汚染のリスクがある

カレニーナがエンジンを停止させるために制御室に向かったのでは?

問題はそこだ。あいつのスピードならとっくに完了しているはずが、システムには何の変化も表れていない

きっと何かに妨害されている。それにもう時間がない

今動かせる執行部隊に連絡し、支援に向かわせる

こっちはパニシングを遮断し、ゲシュタルトを再起動させてみる。ゲシュタルトがなければ、空中庭園を再び制御することは難しい

そのやり方での成功率はどれくらいだ?

非常に低いな。だが全力でやってみるしかない

……地上のドールベアの位置信号を探し、彼女の位置を[player name]に送れ

空中庭園が地球の重力捕獲臨界点に達する時間を常に監視して、私と同期しろ。全人員が脱出できるよう調整する必要がある

……わかった

最高司令部に向かう途中、ニコラは脳をフル回転させてさまざまな状況を整理し、異なる任務情報を同時進行で処理し、順次指示を出していった

ニコラは自分がいつ司令部のオフィスに到着したかも覚えていなかったが、司令部に足を踏み入れた瞬間、全員が安堵の息をついた

総司令、すでにエンジン総合制御室付近の全執行部隊へ命令を出しております

まだ足りない、軍部の全員へ連絡するように

全員ですか?

全員だ

次の瞬間には、執行部隊、工兵部隊、支援部隊、粛清部隊の全ての兵士が避難中であろうが、任務中であろうが、ニコラの通信を受けとった

【規制音】、エンジン出力が下がり続けてやがる――

C7エリアは点検したか?そっちの方が――

システム

ザザ――

……司令部だ……

彼らは顔を上げ、スピーカーを見上げた

ニコラだ。空中庭園は3時間27分後に地球の重力捕獲臨界点に到達する見込みだ

空中庭園の避難艇は各階層の両側にある、それを使えば避難可能だ

あるいは、ここに留まり、空中庭園を助けることもできる

執行部隊はただちに各部門を組織し、修復作業に当たれ。残る者はその場で待機。執行部隊から修復作業を割り当てる

私たちは君たちとともにあり、空中庭園は君たちとともにある

簡潔な通信、まさにニコラらしいスタイルだった

へえ……避難艇なんてあるのか?知らなかった

これほど巨大な空中庭園なら当然あるだろ……おい、避難しないのか?

行くあてもないしな。俺はここに残る。そっちは?

……C7エリア点検完了、異常なし、次はC8エリアへ向かう

このような会話が、空中庭園のあちこちのエリアで繰り返されていた

無数の灯火が前方に向かっていた

ニコラは別の個人通信に切り替えた

こういう現状だ、[player name]

368号保全エリアから帰航する輸送機に座っていた人間は、確固たる決意に満ちた表情で返答した

アシモフがすでにドールベアの位置を端末に送っている

局面打開の鍵は超高速量子コンピュータにあると推測している。ゲシュタルトが再起動できなかった場合、ゲシュタルトの代わりとなるかもしれない

行け、ドールベアを見つけ出せ。そのあとを頼む

それと……

任務ではない、命令だ

最悪の事態が起きた場合、空中庭園に戻ることは許さない

これは命令だ、ただ従えばいい。他のことを考えるな

人類の継続のために、我々は火種を残さねばならない

…………

ニコラに考える時間はそれほど残されていなかった。彼は一瞬だけ、通信に視線を向けた

よし、行け、希望を切り開け

ニコラは通信を切った

キリがない

リーの言葉には苛立ちが滲んでいた

このレベルの侵蝕体は彼とルシアの脅威にはならない。だが増え続ける数が先を阻み、このエリアで足踏み状態になっていた

リー、タイミングを見て先に突破して離脱を。残りの敵は私が

少なくともひとりでも先に行けば支援に間に合います

ダメです、先ほど試したのですが侵蝕体の防衛線の補充速度は想像以上に早い

内側の包囲網すら、僕たちだけでは突破不可能です

ゲシュタルトはまだ再起動せず、空中庭園の混乱はしばらく小康状態だった。エンジン総合制御室の状況も楽観視できず、早急に支援に向かう必要がある

よりによってこんな時に、入口の手前で侵蝕体に足止めされてしまった

どうすればいい?誰かに連絡し、迂回させて支援を頼む?いや、距離的にどのみち間に合わない。今条件を満たしているのは彼らだけだ

おいッ!!邪魔なンだよ――!!

野太い声が攻撃より先に届き、リーは敏感に反応して素早く避けた。ノクティスはリーを襲おうとした異合生物をぶん殴り、倒れた「戦利品」を満足そうに見つめた

しかし背後から迫る別の敵に気付かないノクティスに、侵蝕体が素早く襲いかかった。ノクティスが振り向く前に、その侵蝕体は別方面からの攻撃で仕留められていた

ノクティス、ドンくさい

&*#@%――!?誰に向かって言ってんだ!?

黙って、ノクティス。喚くヒマがあるなら異合生物をもっと倒しなさいよ

皆さん、ご無事ですか?

ありがとうございます!

他の小隊もこちらに向かってる。機体適合や修理に当たる隊員は、人々の避難を担当してるよ

警報レベルがまたアップしました。時間がありません。ここは私たちに任せて、君たちは制御室の工兵部隊を支援してください

了解

死ねぇぇっ――!!

カレニーナは吼えながら目の前の侵蝕体を殴りつけた。この忌々しい連中はよりによってこんな時に現れ、彼女はエンジンを何とかひとつ停止させるのがやっとだった

彼女はこの妨害によって手が回らないでいた

*%#――クソ、何してくれてんだよ、お前!

カレニーナは後方で機器を破壊中の侵蝕体に重い一撃を繰り出した。すでに一部のパーツが損傷している。これ以上機器の正常な動作を阻止されれば、処理ができない惨状となる

*%#!!

遠くにいる別の侵蝕体が機器の破壊を始めている。だが間に立ちはだかる侵蝕体が多すぎて、阻止しようにも間に合わない

カレニーナ!

カレニーナは少し離れた場所にいるリーとルシアを見た。彼らはすぐに緊急制御室に飛び込んできた

ノロノロすんな!!その隣にいるやつだ、機器をこれ以上壊せないよう、そいつを叩きのめせ!

ルシアは指示をすぐに理解し、暴れ回る侵蝕体を倒した

今からそちらに行きます

違う、左側の残りのエンジンを先に停止させろ!オレなんかよりそっちだろうが

早くしろ!空中庭園が地球に落ちかけてんだ!

ルシアとリーは目でさっと意思疎通し、それぞれ残りのまだ起動しているエンジンに向かって走った

カレニーナは戦力を解放し、全ての侵蝕体を全力で攻撃した。戦闘音は途切れなく続いたが、重なり合う侵蝕体の唸り声とエンジンの音が徐々に静まっていった

もっと速く、更に速く。彼らは取り返しがつかなくなる前に、この破滅的な攻撃を止める必要がある

空中庭園の高度が危険域にまで来てやがる!!急げ!

了解!!

カレニーナは最後の侵蝕体を倒し、すぐにエンジン停止作業に加わった。幸い、最後の瞬間に空中庭園の全エンジンが手動で停止された

少なくとも彼らはエデンが地球に急降下するのを阻止し、空中庭園のために時間を稼いだ

しかし脳内は緊張しきったままだ。危機が完全に去ったわけではないことを皆知っていた。空中庭園は慣性で地球に向かって進んでおり、まだ油断できない

次にやるべきことは?

エンジン噴射口の向きを手動で変える。空中庭園はエンジンなしじゃ動けねえ。正しい方向に戻してから再び動力を復帰させれば、ようやくここも地球も、マジで安全なんだ

人手が足らない、誰かを呼んできます

頼んだ、もうトラブルは起きるなよ……

ギィ――!!

制御室の入口に着いたリーに異合生物が飛びかかる。見逃したのか新たな敵かは不明だが、彼は即座に反応して倒した

クソが!いくら倒しても終わらねえ!!

戦闘継続!

了解です

おい!誰かドールベアと連絡取れねーか!?アシモフが、エンジンの再起動にはあいつの助けが必要だとよ!

言い終えると同時に、カレニーナは先ほど撃退した侵蝕体に、更に追撃を加えた

このクソ野郎ども、いい加減しつっこいんだよ――!?