Story Reader / 本編シナリオ / 38 トゥルーインファレンス / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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38-3 花束

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夜の雨はエリシオンを包む霧や滲むネオン、巨大なホログラム広告を突き抜け、車の窓に斜めの軌跡を描いて流れ落ちていく。このところエリシオンでは雨が続いていた

エアビークルはそびえ立つ鋼鉄の森をすり抜け、この都市の心臓部――エリシオンセントラルビルへと向かっていた

ビルの内部は、政治部門のオフィスが各階ごとに区分されている。治安部直属の犯罪捜査局は、ビルの25階から27階までの3つのフロアを占有していた

エアビークルはビルの下には停まらず、そのまま25階の犯罪捜査局の駐車エリアへと向かった

ドールベア、モワノ、ムーアが車から降りたつ

マジな話、なんで局のオフィスがセントラルビルにあるんだ?

治安部は街のあちこちに分局があるし、俺たちは刑事捜査の部署だろ?ここはほとんどが行政部門だし、戻ってくる度に場違いな気分になる

独立した治安部のビルがあればいいのにな

このご立派な街の税金はどこに消えた?下水道か!?

税金ネタの冗談ばかり言ってると、いつか痛い目に遭うわよ

これは成熟した大人として身につけておくべき、基本的なスキルなんだよ

単なる個人的な好みで独立したオフィスビルを望むなら、そんな税金の使い方も感心しないけど

さて、私は埠頭の倉庫で見つけた記録メディアをもう1度調べてくる。前はバタバタだったから

クリスティーナが、無意味にこのデータを調べているとは思えない。何か手がかりが隠されているのかもしれない

俺は調査報告書を書かないとな。ジャッキーの遺体は見つかったが、この事件にはまだ多くの謎が残っている

局長に事件をまとめて捜査するよう、申請する。下水道のことも暴走機械の件も……

必ず、背後にある真相を突き止めてやる

おっと、その前にエレーヌに電話しないと

ドールベアとムーアはモワノに視線を向けた

……このまま帰っていい?もう深夜だし

ドールベアとムーアは不満げな表情を見せた

わかったわよ、降参降参。ヘキサロンバス社の方を調べに行くわ

ドールベアとムーアは満足そうな表情を見せた

エリシオン犯罪捜査局のオフィス

深夜

エリシオンに採光のいい部屋はほとんどない。この街は昼間、いつも雲に覆われ、昼夜の境目もはっきりしない。そのためエリシオンを夜の街と呼ぶ人もいる

ぽつんと明かりが灯るオフィスの片隅で、端末から投影された淡い青色の画面がドールベアの姿を覆い隠していた。彼女は記録メディア内の情報を丹念に読み返している

昨年の国内総生産は32045.7億……増加率3.2%……

外国貿易の輸出入総額……工業製品輸出……

都市建設への総投資額……

ドールベアはかつて、こんな説を耳にしたことがある――全ての秘密は数字の中に隠されている。数字は決して嘘をつかない、と

ただし、謎を解くためには専門的な知識が不可欠だ

もどかしいわね、どう手をつけていいかわからない……

長々とため息をつき、ドールベアはオフィスチェアの背もたれに身を預けた。ゆっくりと背もたれが後ろに倒れていく

自嘲するような呟きをもらし、ドールベアは黙って頭を空っぽにした。彼女の頭上にデータの投影がゆらゆらと漂っている

…………

……………………

………………………………

何を見ているの……クリスティーナ?

そのとても微かな囁き声は、闇の中へと消え、それきり何の音もしなくなった

何を見ているんだ、エレーヌ?

ムーアがそっと部屋のドアを開けた時、リビングの補助灯が点いているのに気付いた。テープライトの暖かい黄色の光は、ソファとテレビの周辺だけを照らしている

テレビでは深夜番組を放送中で、自分を人間だと思い込んでいる機械体が、どこか滑稽な姿でヒロインを追いかけていた

テレビの音

「もちろん、この気持ちはわかっている。私のあらゆる部品と、全てのロジック回路が、君を愛していると訴えかけているんだ」

テレビの音はそれほど大きくない。ソファに座る人影が、そのドラマを真剣に観ていないのは明らかだった

ムーアの声を聞いたエレーヌはハッと振り返り、顔に満面の笑みを浮かべた

やっと帰ってきた!

怪我の具合はどう?見せて。局の医者の処置で問題はない?救急病院に行った方がいいんじゃない?

心配そうな目でブツブツと言ったあと、妻は彼に局への辞職願いを出させようとして、自分はそれを拒絶することになるだろう――彼はそう思っていた

テレビの音

「花束を買ったよ。これが人間が愛情を伝える方法だって調べたんだ」

花を買ったって言おうと思ってたんだ、だが、今はそんなことどうでもいい

ごめんな、エレーヌ

彼は花束を横に置き、そっとエレーヌを抱き寄せた

エレーヌはムーアの胸に顔をうずめ、猫のように鼻をこすりつけた。ムーアのコアの鼓動を感じながら、自分の体温で彼が温まるのを待った

今日はどうだった?

最悪の日だ、エレーヌ。最悪の日だった……

彼は下水道で見つけた、かつてジャッキーと呼ばれた男を思い出した。その虚ろに見上げた目は、鉄筋やコンクリートを突き抜け、空を見ようとしているかのようだった

真っ暗な部屋ではモニターの淡い緑の光が、人影を浮かび上がらせている。彼女の指がキーボードを叩くと、背後の壁に映る大きな影も揺らめいた

モワノの前の作業デスクには、いくつかの私物が散らばっていた。アルベール·カミュのエッセイ集、世界政府の紋章が刻まれたマグカップ……

先ほどドールベアとムーアにヘキサロンバス社の調査を任せられたが、そのことはモワノの頭から一旦忘れ去られていた。今、彼女はもっと重要なことで悩んでいる

どうして……

高速で更新されるデータがモニター上を流れ、反射する光がモワノの瞳を緑色に染めていた

どうして……全然見つからない

あなたたちはどこから来たの……