Story Reader / 本編シナリオ / 33 光追う錆夜 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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33-33 ルシア

私は……

ルシアです

この手帳に、いくつか思い出を記録することにしました。文字にすれば、その時の心情や、言葉にできなかった思いを残せると思って

この習慣が続くといいのですが

…………

今日は006号都市から帰還し、作戦報告を行う日でしたが、指揮官の様子がどこか妙でした

作戦報告会の途中、<M>彼</M><W>彼女</W>は突然グレイレイヴンの休憩室へ駆け戻り、ほとんど何も言わず倒れてしまいました

急いでスターオブライフに搬送し、全面的な検査を行いましたが、検査報告は全て正常という結果でした

指揮官はしばらく休息し、3時間28分後に目覚めました

<M>彼</M><W>彼女</W>の顔色は恐ろしい経験を思わせる酷さでした。私たちの体調を確認し、医師からの証明書を見ても信じず、目の前で再検査を指示してきました

何度も理由を訊ねましたが、<M>彼</M><W>彼女</W>は「悪夢を見たせいかな」とはぐらかすばかり

でも私には理解できないんです――どんな悪夢の光景が、指揮官をあんな表情にさせたのか……本当にただの悪夢だったのでしょうか?

…………

最近、<M>彼</M><W>彼女</W>の目はどこか虚ろです。眠りつつ起きている……いえ、ずっと夢の中で、この世界が全て偽物に見えているような感じで

指揮官のことがとても心配です

…………

指揮官に異変が起きてから……今日で7日目

もしかしたら、「異変」と呼ぶべきではないのかも。<M>彼</M><W>彼女</W>は本当に、ただ長い悪夢を見ているだけなのかも……

それは……ただの夢、なのでしょうか?

この間、休眠している時に、私も「夢」を見ている感覚がありました

深紅の螺旋の塔、爆破された空中庭園、見たことのない私の機体、白い霧に包まれた空間……

違う……

あれはただの夢なんかじゃない

意識海が、こんなに具体的なイメージを構築できるはずがありません

超刻機体は開発されたばかり。私がリーの具体的な戦闘方法を、こと細かに夢で見るのはおかしい。私の新機体ですらまだ計画段階で、外見すらも機密なのに……

「存在しない」ものを、具体的に想像することなんて不可能です

指揮官の夢なら、なおさら……

……

私は、広い荒野で指揮官と……

(紙を破った形跡がある)

…………

今日はいい天気です。指揮官は、あの悪夢の具体的な内容をもう覚えていないようでした

<M>彼</M><W>彼女</W>に夢のことを話してみましたが要領を得ません。でも、私が具体的な場面を話すと<M>彼</M><W>彼女</W>の目に……茫然と恐怖の色が浮かぶんです

指揮官は、何を恐れているんでしょう?

私にはある恐ろしい推測があります。でも、それを確かめる術がありません

もし、夢で見たあの全てが、本当に起きたことだったのなら……

……

私はあの夢を、時の経過とともに少しずつ忘れていくでしょう。でも、できる限りその断片を記録しました

残念ながら断片的なものにすぎないので、「悪夢」の全体像を十分に組み立てることはできませんでした

もしかすると、凄惨な戦い、あるいは勝利を得られない任務だったのかもしれません。それとも……私が直面したくない未来の一端だったのかもしれません

指揮官、たったひとりでここまで耐え抜いてきたなんて……本当に大変だったでしょう

…………

小窓から休憩室の中を覗くと、ルシアが難しい顔で、何かをノートに書き続けていた

最近のルシアは少し様子がおかしい。時折、自分に奇妙な質問をしてくることがある

いくつかの出来事は夢の中で経験したようにも感じるが、他のことは完全に記憶から消えてしまったようだ……

「覚えているはずの過去」をたくさん忘れてしまったような気がする……

端末が催促するように低い振動音を発し、地上任務への出発時刻になったことを知らせた

頭に浮かぶ雑多な思考を振り払い、金属の窓枠を軽く叩いた

ルシア

……指揮官?

真剣な表情でノートに何かを書き込んでいたルシアは、自分が来たことに気付いていなかったらしい。彼女は少し驚いた様子で顔を上げた

ルシア

あっ……すみません。任務をうっかり忘れるところでした……

ルシア

……そうですか。必要な戦略物資は事前に作戦準備室に置いてありますから、いつでも出発できます

あの、指揮官……

ルシアは少しためらってから、こちらに向かって労わるように微笑んだ

ルシア

指揮官……お疲れさまでした

ルシア

何でもありません。私も……悪夢を見たということに

そう言って、ルシアは手早く身の回りの物を準備し、自分と一緒に休憩室を後にした

近頃、自分も時々ぼんやりとした断片的な奇妙な夢を見る。だがなぜか、いつもその内容をはっきり覚えていられないのだ

そのせいで、ルシアが見た夢のことも気になった

それなら、輸送機の中でゆっくり話しましょう

大丈夫です、私たちには……

私たちには、これからまだまだたくさんの時間があります