ふう~
ハカマがナイスタイミングで戻ってきてくれて助かった~!ハカマがいなかったら、こんなに大勢の同胞を助け出せなかった――
でも、いくつか物資を失っちゃったのは残念だな……
セージ様がすぐに機体交換を決断されたお陰です。でなければ、私と輝ける行進者が駆けつけたとしても、この辺りは赤潮に呑み込まれていたでしょう
それにあの……人間たちも
彼女は、片隅でブルブル震えながらうずくまっている人間たちを見た
彼らは保全エリア付近で暮らしていた住民たちだ。変異赤潮が保全エリアを呑み込み、彼らは赤い泥に追われるようにして、近くの廃墟へ逃げ込んだのだった
――人間がここで何をしている!?なぜこいつらが生き残った!?
さっきの赤い泥に投げ込んでおくべきだった!
こいつらさえいなければ、もっと多くの同胞を救えたかもしれないのに!彼らがこんなやつらに構わず、踏み潰して逃げていれば――
お、お母さん――
静かに身を寄せ合っていた人々の中にいた小さな女の子が、この巨大な機械体に怯え、声を上げて泣き出した
大丈夫、大丈夫よ……
傍らのフードを被り、「お母さん」にしては若すぎる少女が、女の子をしっかりと抱きしめた
――輝ける行進者、いけません
ハカマは人間たちの前で怒りを爆発させる輝ける行進者をたしなめた
怖がらなくていいの、おチビちゃん――
ナナミはしゃがんで、優しく女の子の頭をなでた
ほら……これ、なーんだ?
ナナミが手を広げると、小さな光の粒が現れた
光の粒が膨らみ、それはふたつの小さな星になって空中を跳ねまわっている
……わぁ
女の子はいともあっさりとそちらに興味を惹かれ、鼻をすすりながら、ナナミの手中にある星を恐る恐る眺めていた
さあ、これ、あげるね――
ナナミは小さな星を髪飾りに変え、女の子の頭につけた
そして、こ~れ~は~!ピカりんに!あ!げ!る!
何倍もの大きさに巨大化した「星」を輝ける行進者の頭にガツンと叩きつけると、ナナミは大声で言い放った
いい!?ピカりん!機械体と人類は仲良くしなきゃダメなの!イジワルしないで!
……フン!
頭を抱えてその場をくるくると回った輝ける行進者が、再び怒りを爆発させた
同胞を助けられたはずなのに……全部、あの赤い泥の中にいた怪人のせいだ!我は目の前で赤い泥が、2体の同胞を呑み込むのを見た!
出てこい、一騎打ちだ!怪人め!
あ、赤潮の中に怪人までいるの?怖いよぅ――
ギギギギ!ギギギギギギィ!
泣き声や怒鳴り声が入り混じり、機械教会内は瞬く間に大混乱に陥った
……
セージ様、本当にこれで……問題ありませんか?
彼女には、人類と機械体が平和に共存できるかどうか、判断できなかった
大丈夫だって――
こらーっ!その人を放してっ!
少し目を離した隙にまた衝突があったらしく、別の機械体が叫んでいる人間を高々と持ち上げていた――
機械体と人類の共存は、想像するほど簡単ではないらしい
ほんの短い時間に、機械体と人類の間で起きた衝突は15.5件にも上った。この半端な「0.5件」というのは……
……ふう、殴り合いになる前だからセーフ……
……セージ様
このままで、本当に大丈夫なのでしょうか?機械教会は人類を受け入れた前例がありません
うーん……きっとなんとかなるよ
ナナミ、指揮官と仲良しだし!指揮官は一度もナナミに怒ったりしたことがないし、だから、きっと大丈夫!
とにかく、このままいってみよー!
灰色の髪の少女は、鼻歌交じりにネヴィルのマジック工房へ向かって歩いていった