Story Reader / 本編シナリオ / 27 稗史刻む焔志 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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27-20 折れた尾

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これでもまだ駄目だと……統帥に勝利をもたらせないというのか?

相手も自分も破壊し続ける激しい戦いで、彼の機体はすでに限界を迎えていた

体内からはバキバキと断裂音が聞こえ、動作伝達を担う人造骨格が過負荷に耐えられなくなっている

倒れ込んだ彼は、もはや起き上がることができない

はぁ……はぁ……

一方で体中に攻撃の傷跡が残ったワタナベは、地面に突き刺した刀で体を支え、なんとか体力を回復しようとしていた

彼の体から放射される高温の熱が周囲の空気を歪め、青い残り火が地面を黒く焦がしていく

バラードは一体何が目的なんだ!

俺よりもずっと長く一緒にいたんだろう、まだわからないのか?

相手はボロボロに剥がれたバイオニックスキンを引きつらせながら嘲笑った

空中庭園に何か深い恨みでもあるのか?

恨み……そんな感情はない……

俺は生まれた時から盲目だ。黄金時代の技術でも手に負えない遺伝性のものだ

だから他人の会話が本当に理解できるようになってようやく、俺の世話をする人たちが実の両親ではないと知った

捨てられたのさ……正確にいえば売られた。古い端末の値段程度でな

もともと捨てられた人間だ。また捨てられようが気にはしない

光のない目には、何の憎しみも何の欲望も映っていない

なら、なぜ命を賭してまで戦う?

ワタナベは彼を地面から引っぱり起こし、怒りに満ちた声で問いただした

メンテナンスしていない体を引きずって、得意とする方法以外でわざわざ私と戦ったのは何のためだ?

お前とバラードはどんな未来を望んでいる?

未来?

そんなもの、望んだことはない

お前たちは黄金時代の輝きを見てきたか、エデンで生まれたかのどちらかだろう

お前たちは幸せな未来がどんなものかを知っている、実感したこともある……

だが俺は知らない……最も輝ける時代に生まれはしたが、最も暗い場所で暮らしていた

統帥が俺を隠されたラボから連れ出した時、世界はもうラボの中と大差ない免疫時代だった

彼はまだ動かせる左手で自分の目を指差した

俺は光を見たことがない。どうやってそれを想像し、期待しろというのだ?

統帥はそんな俺に、人が生まれながらに持ち、生涯の支えとなるものを与えてくれた……

力だ。戦う力だよ

戦いは俺が見つけた唯一の救いだ

誰にも奪われない、俺の唯一の存在意義だ

彼はワタナベの手を探って引っ張ると、必死に握ろうとしてきた

お前たちが戦う意義は、生存や救済、未来のため……

だが俺には戦いそのものが意義だ

だからどんな任務でも俺はやる……どんな敵だろうが俺は消す

この件は俺に任せてください、統帥

……治療がまだ終わっていないだろう

バラードはその頑固な部下に行くなとは言わなかった。彼にとって戦闘を奪うことは、命を奪われること以上に耐えがたいことだと知っているからだ

前回失った手など、ほんの小さな怪我です。二度と失敗はしません

小さな怪我だと?右腕の磁化装置、お前はそれを自在にコントロールできるのか?

……

もしできないのなら、やはり私が自分で対処する

ワタナベは……私の最も優秀な生徒のひとりだ。万全の状態ではないお前が勝てる相手じゃない

ナイゼルはもともと寡黙だが、前回の失敗以降、口数は更に少なくなった

しかし今回、彼は珍しくバラードの意見に正面から反対した

統帥、あなたが行くべきではありません

あなたがオブリビオンにいるから、彼らは空中庭園と戦おうとしているんです

そのためにあなたは数十年をかけて準備し、この機会を待っていたのでしょう

今はもう帰還不能点にいるんです。進むか諦めるかのどちらかです

空中庭園もオブリビオンも、我々に迷っている時間など与えてはくれません

あなたはいつも俺に、力は使うべき時に使うものだと仰った

俺の力を使うのに、これ以上最適なタイミングはありません

バラードは顔の半分を失ったナイゼルを見つめ、重々しく告げた

お前は死ぬぞ

ワタナベへの殺意とは関係ない領域で、前回失敗した目の前の男が、次は最も確実な方法で任務を完遂するだろうことはわかっていた

ましてや彼の言う通り、もう引き返せない地点に来てしまった

別に死にたい訳ではありませんが……

戦いの中でこの命を捧げられるなら、それは俺にとって最大の救いとなります

……

1秒すら長く感じられるほど、重苦しい沈黙の時間が流れた

吉報を待つ……

はっ!

ナイゼルが暗がりへと消えたあと、バラードは彼が去った方を見つめながら長い間立ち尽くしていた

そして古い端末を手に取ると、唯一登録されている連絡先に発信した

呼び出し音ががらんとしたオフィスに響き渡る

???

もしもし?

統帥が吉報を待っている……

ナイゼルの右腕の磁気リングが赤く光りだした

ちまき!

はい!

ちまきはすぐに呆然と立ち尽くすジャダの方へと駆け寄った。ワタナベもナイゼルを投げ飛ばし、すぐに近くまでやって来た

何があろうと統帥の計画を邪魔させない!

硝煙と火花、そして爆発が一瞬で視界を覆いつくした

火薬の臭いが、ナイゼルをバラードと初めて会ったあの日に連れ戻した

激しい爆発と牢獄が破壊される音、重い足音……そして初めて耳にした誘いの声

バラード

またここにも被害者がひとりいた……どうだ、我々と一緒にあの虫けらどもを灰にしてやるってのは?