Story Reader / 本編シナリオ / 24 惑わせる森 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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24-9 迷える影

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指揮官、怪我人と優先的に避難すべき人は全員搭乗しました

すぐに出発させましょうか?

ヴィラの小隊の輸送機はすでに人でぎっしりだ。担架の上に横たわる人以外はほとんどが子供と老人だった

あれの動きが止まりました

サロンスはすぐ目の前に見える、膨張しきった球形森林を指さした

何人かが軽いかすり傷を負っただけで、問題ありません

清浄地にあの塔が現れた時ほどの強烈さではないですし、かすり傷なんて一番の軽傷ですよ

でもこの止まらない振動が不気味ですね

空中庭園から見れば、地球に急に腫瘍が現れたように見えるかもしれない

大地を踏みしめて見上げてこそ、人々を屈服させ、恐怖させる巨大さを直観的に感じられる

反転異重合塔が出現した時と違い、あれは触れられないような精密な何かではなく、大地から生み出された裏切りのようなものだ

天上人が造る神の階段とはまるで異なり、一瞬で大地を引き裂いた根が目の前にそそり立っている。そのせいで、静かに見える周囲の森にすら恐怖を覚える

唯一幸いだったのは、急速に増殖したものの、次第にその勢いが緩やかになったことだ

もしあの速度で成長し続ければ、今、目に見える辺り一帯が全て飲み込まれていただろう

とはいえ――あの邪悪な生命力がなくなったとは思えない。足下から伝わる細かな振動から、誰もがそう感じていた

今回の輸送では怪我人を全員乗せたので、担架が場所をとってしまって。ぎゅうぎゅうに詰め込んで、後3回……いや、頑張れば2回でしょうか

私は最後に乗ります。最初の人たちの中に信用できる人がいますから。私がすぐ行く必要はありません

はい、あなたたちを信じています

サロンスはそう言うと、まだ忙しくしている男たちの方へ向かった

彼らは地震で壊れた建物を倒そうとしている。そのままでは二次的に更に大きな被害が起きかねないからだ

自分はそれほど重要な存在ではないと言っていたサロンスだったが、腕まくりをして、皆に混じるリーダーらしい姿には敬意を覚えた

視界の端にリーがテントの中から手を振っているのが見えた。出発する輸送機をちらっと見上げてから、急いで軍用テントに戻った

これが見つかったらしいです

机の上にあるのは、ケルベロスが持っている専用遠隔リンク補助機械だった

確か、こんな物があったって覚えてたんです!

ケルベロスの構造体の遠隔リンクチャンネルは独立しています。規格も普通の通信より高い。試してみてください!

でも彼らの指揮官以外、遠隔リンクできる人はいないと思います。繋がったとしても……

その構造体が「さすがは伝説のグレイレイヴン指揮官」とつぶやいた。おそらく狂気に囚われた構造体と意識リンクする苦痛について、どこかで聞き及んでいるのだろう

そう言いつつも、彼はすぐに機械を設置した

リーが軽くため息を漏らす

万が一に備えて、リーフに緊急用の薬品を準備させておきます

私の知る限り、あの新しい機体と遠隔リンクした人はまだいません……本当にやるんですか?

私が言いたいのは、あの機体は遠隔リンクの修正や調整をしていません。何度もトライする必要がありますから、確実に厄介です。心の準備をした方がいいですよ

自分をよく知らない21号、怯えている21号、迷っている21号。かつて彼女の感情を体験したことがある

機体が変わっただけで、彼女が変わった訳じゃない

それに重要なのは、困難に直面している彼女たちを助けることのはず

そう言って目を閉じた