Story Reader / 本編シナリオ / 22 紡がれる彩華 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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22-23 『世の光』

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>>>確認――世界時間校正、00:16AM、UTC-4<<<

>>>会議内容バックアップ<<<

>>>バックアップ完了、次の議題、日程を確認――3日後、環大西洋経済共同体本部で入札会議を開催、出席者リストを確認……<<<

ミケーレ先生、かなり精神状態が不安定ですが、部屋にお連れしましょうか?

いや、カール、市街地に連れていってくれないか

すでに18時間連続で休息なしに働き詰めです。医者の指示によれば毎週70時間以上の休憩時間を確保しないと、病気が更に悪化してしまいます

はぁ、年を取るってのは嫌なもんだな。なんでもかんでも管理される

それが私の務めです。ミケーレ先生

規則正しい生活を送ったとして何年生きられる?5年か?3年か?残りの時間をどう過ごせと?毎日毎日ベッドの上で、腕は点滴だらけだ。筋肉が縮んで筆すら握れなくなる!

そんなの、死んでるのと変わらん!

先生、あなたの病気には回復の可能性もあります。私は28例の回復例を探すことが……

慰めてくれなくていい、カール。自分に残された時間くらい、わかってるさ

……

今日の会議をもう一度振り返ろう、カール

お前は我々の協力者をどう見る?

……私が見いだした結論を詳細に説明した方がよろしいですか?

俺に隠す必要はない、カール。お前が九龍に行って以来、ずっと調べていたことはわかってるんだ

あの曲閣下と話したことで、お前は新しいものを手に入れたようだな。それこそこの老いぼれが見たいものなんだよ

珍しく機械体は少しためらった。彼はうつむいて自分の考えをまとめると、ようやく話し始めた

……ノルマン鉱業グループの条件はとても寛大だと思います。しかし彼らがコンステリアを請け負いたいのは、今日提案された以外にももっと理由があるのでしょう

公式と非公式の統計によれば、ノルマングループを含む関連グループは似たような方法で、少なくとも47以上の地域の経済主導権を掌握しています

それから連合政府とアディレ商業連盟の提案ですが……

カールは全世界のネットワークや隠されたデータベースで調べた情報を列挙した。それらは裏の世界では誰もが知ることだが、黄金時代の一般市民はほとんど知らない事実だ

北極航路連合と九龍の代表それぞれに狙いがあります……環大西洋経済共同体が招いた「グリース」という特別顧問……彼の資料は極秘レベルで、大きな背後を持つ可能性がある

皆、この街を手に入れようと画策しています。コンステリアを自分の経済勢力圏の一部にしたいと考えているのでしょう

ミケーレはカールが話し終わるのを静かに待っていた

まさかお前がこの世界について、これほど深く認識してるとは思いもよらなかったよ

先生、単刀直入に言いますが、彼らは……あなたやこの街の理念に反しています

でも彼らに頼らずに、この街を作ることなんかできないだろう?

俺が設計して、俺がレンガをひとつずつ積み上げろと?

我々は彼らの力が必要だが、彼らは俺なんか必要じゃない。彼らはいつでも俺を誰かとすげ替えられる。俺の立場はそれほどちっぽけなんだ

でも、コンステリアは先生の作品です……

違うんだ、カール。コンステリアは俺の作品じゃない、人類の作品だ

人類がこれを築き上げた。俺はただ、その人類のひとりにすぎないのさ

ハハッ、でもな、自分の欲深さも認めるよ。これがオーケストラなら、俺は指揮者の場所に立とうとしている。なんといっても一番目立つ場所だ

オーケストラを「指揮」しているのが、指揮者自身ではないとしても

>>>確認――世界時間校正、00:30AM、UTC-4<<<

お薬の時間です。先生

カールは無菌ケースから注射器を取り出し、ミケーレの袖をまくると、静脈に注射をした

注射器の薬が少しずつ自分の体内に入っていくのを見ながら、ミケーレは微笑んだ

人間ってのは脆い生き物だ。お前が少しでも力をこめれば、このか弱い腕はボキッと折れてしまう

カール、最近、自分で創作することを試してみたか?

先生、私がすべきことはあなたのお世話です

じゃあ俺が死んだら?他の偏屈じじいの面倒でも見るのか?

……条約によれば、あなたは臨終の前に私を廃棄処分する権利があります

俺がそんなことをしないのは、わかってるだろ

はい……存じ上げています。先生

>>>確認――世界時間校正……ネットワークがオフライン、時間を同期できません<<<

こんにちは、ミケーレ先生にお会いしたいのですが

>>>訪問者の身分確認……オフラインのため、データベースを確認できません<<<

……どなたでしょうか?

相手はまだ年若い青年で、きちんとした服装やピンと伸びた姿勢が、自信を持ちながらも控えめな印象を与えている

私はアレン、世界政府芸術協会のメンバーです。私は世界政府芸術協会会長の命を受けて、ミケーレ·ワセリ先生に会いに来ました

「世界政府芸術協会」と聞いて、カールは眉をひそめた

世界政府芸術協会からの申請は来ていませんが。それにここは芸術協会を歓迎していません

あなたはミケーレ先生の助手ですね?会長から聞いています。あなたはミケーレ先生に対してかなり深い愛情を持っていると

先生のお世話は私の務めです。用がなければお帰りください。先生は静養が必要ですので

カールが半ば強引にそのアレンという若者を追い返そうとした時、室内から弱々しくも凛とした声が響いた

ミケーレ

中に入ってもらえ、カール……ゴホッ、ゴホ……あの老いぼれにこの場所を教えたのは俺だ。せっかく来た人を歓迎しない作法はない

わかりました

お邪魔しますよ

アレンは礼儀正しく一礼し、ミケーレの寝室へ向かった。カールは彼の後ろにくっつくように歩き、守衛のように扉の前に立った

ベッド上の老人はかつての活力を失い、やせ細った腕には青く血管が浮き出ている。部屋に点滴や注射器などはなく、もう薬物の力に頼る必要すらないらしい

お会いできて光栄です、ミケーレ先生。私はあなたの話を聞いて成長したも同然の者なんです

おべんちゃらはいい……お前はあの老いぼれのとこの学生だろう。「カラスコ」が俺のいい噂をするとは思えん

いいえ、あなたという親友を失ったことが人生最大の後悔だと、先生はよく仰っていました

そうか?彼と絶交したことを俺は一度も後悔していないがな

それにコンステリアの件については、私も先生も残念なことだと思っています

世界政府芸術協会があなたの力になれば……状況が少し変わるかもしれませんが

カカカッ……片足を棺桶に突っ込んでる老人を無為に慰めてどうなる。もし世界政府芸術協会が本当に力になるなら、俺だって図々しく頼みに行ったさ

俺は全力を賭けたが、変えたかったものを変えられなかった。芸術の力を証明しようとしたが、足をすくわれた

お前の先生に「世界に挑むやつは、いい最期を迎えない」と言われたっけな。ある意味、彼の予測は正しかったってことだ

だがあのノロ亀野郎はあまりに臆病すぎる。それだけは見過ごせなかった

私が思うに……芸術に欠けているのは力ではないと思います。我々が芸術をどうやってうまく活用するかという方法を知らないだけで

はは、俺の若い時よりも尊大な考えじゃないか。見直した……まさか「カラスコ」の下にこんな学生がいたとは

あなたは自分の人生を使って、理念を実践していました。だから私も一生を使って、自分の見解を証明したいのです

アレンはミケーレにそっとうなずくと、懐から金箔の手紙を取り出した

これは先生が最期にあなたに書いた手紙です。私は、先生の伝言を伝えるために来ました

死んだのか?

その質問にアレンは沈黙で答えた

もう帰るがいい。その手紙はここに置いていってもいいし、持ち帰ってもいい。俺は読まん

かしこまりました。では私は御前を失礼します。ミケーレ先生

アレンはそれ以上語らず、手紙を玄関にそっと置いて、ミケーレ邸を後にした

カール、こっちへ。手を握ってくれ

カールは指示に従い、ベッドの横にひざまずいた。老いた手が冷たい金属の指に絡み、カールは主人の脈を計測し始めた。脈はゆっくりと緩やかだ

先生、手紙をお読みならないのですか?

俺の命はもうすぐ尽きる。手紙を書いたやつは俺より一歩先に去った。そんなのを読んでどんな意味がある

あいつにはいい学生がいた。それだけを知れば十分だ

あの老いぼれ、俺が羨ましがると思ったんだろう。残念だったな、そりゃ違うぞ

俺は一度も学生や弟子を取らなかった。この性格のせいだな。誰も俺と同じ道を歩むことはないと、孤高の人間気取りだったんだ

カール、お前は一度も創作などしていないが、ある意味、お前が俺の学生みたいなものさ

先生、私にそんな資格はありません。私はただの……機械体です

機械体は人間の学生になれないとでも?

お前は肉体の苦しみを受ける必要がなく、寿命に縛られることもない。お前の魂は、自由にこの世界を渡り歩ける

俺よりもはるかに遠くに行けるんだぞ

……機械体に魂などありません。先生

そうかな、カール?

……

お前はずっと自分をサンチョ·パンサだと思っているようだが、永遠に仕えられる主人などこの世にはおらんぞ

俺はお前に物語の書き手になってほしい。サンチョ·パンサでいる必要はない。お前が仕えるドン·キホーテはもう去る。だから、お前は自分の旅を始めるんだ

先生、私は……

誰もが俺は失敗したと思っている。誰もが俺の努力は水の泡だと思っている。だが俺は知ってるんだ。俺は失敗などしていないって

お前を見つけたからな

>>>確認――セルフチェック開始<<<

>>>機体の破損を検出、複数の機能がオフライン<<<

>>>権限のないモジュールが装着されています。システム再起動<<<

気がつきましたか?

「魔術師」が体の修理をしてくれましたが、適切なパーツがなく、本来の姿には戻せませんでした

私は……

新しく取り換えられた視覚モジュールが作動し始め、彼はそのボロボロのベッドから身を起こし、辺りを見回した

ここは教会らしき建物の中だが、ひどくぼろぼろだ。どうやら長い間打ち捨てられていたらしい

私は……?

記憶モジュールの読み込みにタイムラグがある。機体がひどく破損したのだろう

人間が「パニシング」と称したものの侵蝕が始まって、世界は崩壊しました

あなたのかつての主人は荘園の中に臨時シェルターを作り、家を失った人々を収容していました

私の……主人……

>>>記憶モジュール読み取り完了、記録を再生します<<<

もうすぐパニシングがここまでやって来る。もうここに残っていては駄目だ!

この機械体もいずれ侵蝕される。そうなったら僕らも終わりだ!

でもカールさんがずっと面倒を見てくれたし……

落ち着いてくだ――

そう言いかけた時、後ろにいた男が花瓶を振り上げ、カールの頭めがけて振り下ろした

外部端末の欠損を検知――

ちょっと!何てことを!

やられる前にやっただけだ!パニシングに侵蝕されたら、こいつも人類の敵になる

金目の物と食べ物を持ってこい。急げよ、世界政府が通告を出した。より安全な場所に移れだとよ!

あなたたちは――先生の所有物を……持ち去る……権限がありません

あなたたちは――権限――

彼に見えたのは、立ち込める煙と燃え盛る炎……

>>>再生終了<<<

あなたを修復した時、あなたの記憶を見てしまったことは謝ります

データの損失を検出……レベル2の機密資料……先生の作品集……

外部端末が酷く破損し、メモリーを交換するしかありませんでした。完全に適合した代替品ではないため、交換時に本体記憶以外の多くのデータが削除されてしまいました

「教皇」が廃墟であなたを発見し、ここに連れてきたので、私たちが修理しました

彼らは今もこの付近で生存している機械体を捜索しながら、私たちの必要とする物資も探しています

あなたは……?

私はアルカナといいます。黄金時代には神秘学と占いの研究を補佐していたバイオニック機械体です

パニシングの爆発後、私はまず「魔術師」と「教皇」を見つけ、その後あなたを発見しました

今、機械体は人類によって無差別に破壊されています。私たちは一致団結して、「覚醒」した同胞を無意味な苦難から救わなければなりません

私は今、「魔術師」や「教皇」と、機械体同士で助け合う組織を作ろうとしています。あなたも加わってくれませんか?

私たちは自分たちだけの方舟を作り、機械体の新天地へ向けて漕ぎ出そうと思っています

……それをどうやって実現するつもりですか?

私は「セージ様」のお言葉を聞きました。セージ様が私たちを未来へ導いてくれるはずです

その未来で……人類はどうなります?

あなたはすでに彼らの所業を見たでしょう。彼らの最期を想像するのはそんなに難しくないはずですよ

……

今の私には居場所がありませんし

あなたたちは私を救ってくれた……断る理由はありません

ようこそ。どうかこの証を受け取ってください。これから私たちは仲間です

アルカナが差し出した銅のカードには「ⅩⅥ」の数字と、雲を突き破る塔が描かれていた

あなたの名前は?コードネームは外向きの呼び方なの。仲間同士は名前で呼び合う必要があります

……

「カール」という名は主人から与えられたものだった。今はもう、自分の主人は本当にこの世にいないのだと、彼はようやく理解した

私のかつての名前は、仕えていた主人とともに葬られました。今後は彼の「学生」として生きていきます

だから……私のことは……「セルバンテス」とお呼びください

>>>確認――機械教会時間、9:45AM<<<

>>>「グレイタワー」第7331回目の試運転終了、まもなく教会全体に全ネットワークを公開します<<<

>>>第7330回目のシミュレーション結果を計算――結論を生成しています<<<

複雑なコードが彼の電子脳に転送された。しかし彼はただそれをちらっと見ただけで、すぐにハードディスクのゴミ箱に入れた

彼はこの不思議な形をした大型演算シミュレーション端末を最後に眺めた。仲間と数年間費やして作り上げた「教会」を、離れるつもりだった

「教皇」

本当にここを去るつもりか、セルバンテス

ローブをまとった機械体がいつの間にか現れ、彼の側にやってきた

彼は教会の「教皇」であり、セルバンテスが教会で最初に知り合った機械体のひとりだ。彼の呼び名はいろいろあるが、セルバンテスはずっと「教皇」と呼んでいた

「グレイタワー」の建設も終わりましたし、今後のメンテナンスはネヴィルに任せれば問題ない。私がここに残る意味はありません

この塔は教会に所属するワールドネットワークのようなものです。いくら離れようが、私たちは連絡を取り合えますし

「教皇」

お前にとって、「去る」ことがよりよい選択だと?

ここにいるほとんどの同胞が「セージ様」の降臨を待っています

「待つ」ことは痛みを癒します。同胞たちはかつてこの世界に絶望していました。でもセージ様の「啓示」が本当に存在するなら、彼らは未来に期待を持つことでしょう

しかし私は待つことはしません。私にはまだやり遂げていない使命があります

彼の学生として、私は彼にふさわしい「作品」を作る必要があるからです

セルバンテス!セルバンテス――!

機甲型の機械体がロビーに飛び出してきた。取り乱して体からさまざまなコードを引きずったまま、セルバンテスの名を呼んでいる

ネヴィルからお前が行ってしまうと聞いたぞ!どこへ行くんだ!?

カガさん……まさか修理中に飛び出してきたんですか?ネヴィルが怒り狂いますよ

それがなんだ!お前が行ってしまうのに!俺があの野郎を倒して「戦車」になるのを見届けるって約束したぞ!約束破りじゃないか!

それはあなたが期限切れのオイルを飲んで勝手に決めた約束でしょう。私はそんなことを約束した覚えはありませんよ

嵐のダイスマン!貴殿は知っていたのか!

「教皇」

ガハハ……これはセルバンテスが決めたこと、彼を引き止める理由など私にはない

ご心配なく、カガさん。一部の機械体がともに来てくれるようです。私はひとりではありません

どうしても、なのか?

先生は私に、「失敗」はしなかったと言ったのです。私はその彼の言葉を証明する必要があります

彼は私を、彼の夢を実現するために私を選んだのです

彼が望む世界を、私が創り出せると信じていたんです

「教皇」

だがしかし、お前はそのやり方を知らないのだろう

……そうかもしれません。でも私は答えとなる鍵が「人間」にあると考えています

彼らは我々の予想に反し、住み慣れた地球をいまだに奪還しようと奮闘しています

私は、機械体の未来にもその「答え」が必要だと考えます

「教皇」

わかった。どうやらお前はこの旅のために十分すぎるほど準備をしたのだな

旅がうまくいくよう祈ろう

もし旅の途中で自分の方向や探しているものを見失った時は、まず「形」から始めるといい――確か九龍の古書では、これを「格物致知」と呼んでいたようだ

その意味を真には理解していないでしょう?

「教皇」

取るに足らないただのアドバイスだ。そなたの友として

ああ……ありがとう、参考にします

では、私はここで

金属の矢が最後の機械体を貫き、ロビーに再び静けさが戻った

……終わった?

警報も止まったし、しばらくは大丈夫だと思います

トロイは上腕にはめたトンファーを外した。内部のハンマーの後部から蒸気が噴き出し、赤く熱を持った鉄針を冷却した

ライナもシルカから武器箱を受け取って、矢を補充した

3人はアイラと別れたあとも進み続けた。途中で手こずる敵と出会うような戦闘もなく、新しいロビーに到着するとすぐに次の行動の準備を始めた

アイラさんは端末を切ったようです……意識リンクも切れていて、彼女の居場所が確認できません

探さないで、って意味ですかね?

この芸術館は大回廊で繋がる構造だし、もし彼女が無事なら、きっと最終地点で私たちと合流できるはず

アイラさんなら大丈夫です。あんなの、へっちゃらのはずです!

だから、精神論に基づく楽観的な予測だけじゃ駄目って何度言えば……

その時、シルカの指揮官用端末が鳴った

通信……?まさかアイラさん?

シルカが通信要請を許可すると、モニターには予想外の人物の姿が映し出された

もしもーし、ナンバーワン?聞こえる?

フン、まだ繋がるとはね。ナンバーワンの小隊がまだ生き残ってるなんて、奇跡だ

バネッサ先輩……!?なんでここに……外との通信が回復したんですか?

バカね、そんな訳ないでしょう。自分で確認しなさい!

連絡が繋がったのは、私たちが近くにいるからに決まってる

えええ……?近くって?待って、「私たち」って今仰いました……?

[player name]先輩!?どうしてバネッサ先輩と一緒に?あなたたちもこの街に来たのですか?

ほう?これが噂のグレイレイヴン指揮官?

……

どうした?「憧れ」の首席に会えて膝ガクガクか?情けないわね

そうだ、あの世界政府芸術協会の構造体は?まさかお前の指揮が下手すぎるせいですでに犠牲になった?

アイラさんは敵を引き寄せるため、しばらく別行動をすることになりました。すぐ合流予定です

へえ?構造体を囮にしたの?悪くないじゃない。やっと私の教えを思い出したのね

う……

それにしても司令部は一体何を考えているのか。寄せ集めの小隊にこんな任務を任せるとはね

しかも私とこの疫病神に尻拭いを頼むとは

バネッサ先輩、それって……?

時刻は午後4時近く、コンステリアの街の中心へ向かう道沿いにふたりの人間と3名の構造体が歩いている

つまり……黒野の部隊もここにいるってことですか?彼らは失われた実験成果を回収するために?

なるほど。そういうことなら、今まで起きたことも説明がつきます

よくぞ気付かなかったな、さすがボンクラー小隊

もちろん我々を助けに来たわけじゃない。証拠隠滅だ

軍のそんな小細工はとっくに周知の事実だ。執行部隊に何年もいれば、わからない訳がないのに

わかりました。バネッサ先輩と[player name]先輩はそのために来たんですね?

では、アイリスウォーブラー小隊の行動方針を最新状況に合わせて調整します

私たちはこのまま調査を続け、グレイレイヴンとホワイトスワンの支援を待ちます

ちゃんと時間を稼げよ、ナンバーワンワン。お前は私の初めての学生なんだから、恥をかかせないで

シルカの返事を待たず、バネッサはブツっと通信を切った。その時、前方で偵察をしていたルシアが戻ってきた

異常ありません、指揮官

リーフとリーがいれば、この街をより詳しくスキャンできたのですが

今は私ひとりだけなので、もっと慎重に行動しなければ

観測任務の後、リーは科学理事会で調整を受け、空中庭園で超刻機体の定期チェックを受けている。リーフも似たような理由でヒポクラテスに呼び戻された

そのためニコラは同じく任務を終えたホワイトスワンを支援のため送っていた

バンビナータもご主人様とグレイレイヴン指揮官を手伝います

ふん、ナンバーワンと揃って私の足を引っ張らないように

バネッサは前方にチームとはぐれた奇抜な塗装の構造体がいるのを見た。その構造体はつま先立ちで街の建築を眺めている。その様子に、任務中の緊張感はまったく存在しない

ちょうどいい「おもちゃ」候補が見つかった。調教する価値があるかどうかを見てみよう

ついでにあのバカに、部下の正しい育て方を教えてやらなきゃ

そう。構造体すらうまく使えないトロくさい女が、一体どうやって首席になれたんだか。顔を見ただけで腹が立つ

勤勉なだけで長所は皆無。司令部から面倒を見ろと頼まれていなかったら、すぐにファウンスに送り返して再教育させたところ

でもご主人様は、シルカ指揮官の作戦報告を全部個人端末に残していました、詳しくコメントを書き込んでいて……

黙りなさい!誰が話していいって言った?

私が彼女を教えたのは司令部での自分の評価を上げるため。貴様と違って、私は執行部隊の指揮官に収まるだけじゃ物足りないのよ

冗談でしょ。貴様を嫌ってるのと同じくらい、彼女を嫌っている

彼女みたいなバカは、いずれ戦場でわけもわからないまま死んでしまう。私はただ彼女に長生きするテクニックを教えているだけ

またぞろ気持ち悪いラブ&ピース理論を語るって?やめてよ、アレルギーが出る

本当にバカなのか、バカのフリをしているのか……

「戦争」が終わるわけがないわ。たとえパニシングが脅威じゃなくなっても

どうしてそんなことを言うのです?戦争が終わることを皆が望んでいるのに?

お前も実はわかってるくせに?「空中庭園の英雄」「グレイレイヴン指揮官」。一番わかりやすい例が目の前にあるだろう

バネッサはルシアとバンビナータを指さした

どうしてここ数十年で、構造体技術がこれほど進歩したのか、わかっていないの?その多くの研究が、昔なら絶対に許されないものだった

私たちの「救い」を待つ実験体もその産物なんだ。「構造体技術」しかり、「昇格ネットワーク」しかり

それらの目的が達成されるまで、この戦争が終わると、本当に思うのか?

ハ……そう?じゃあ、せいぜい武運長久を祈っておく

バネッサは見下した表情を浮かべ、はいはいとばかりに適当な拍手をした

相手が顔色ひとつ変えないのを見て、バネッサは興味を失ったように目をそらし、街の奥の方を眺めた

どうしました?ご主人様

別に。このふたりと任務に出るって考えると、頭が痛くなった

バネッサは視線を戻すと、バンビナータについてくるように合図をして歩き出した

行くわよ。さっさとこの任務を終わらせるに限る

……