Story Reader / 本編シナリオ / 21 刻命の螺旋 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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R8-1 欠片-08-T3265

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その時、全ての記憶がリーの脳裏に流れ込んだ

ここはやはり彼の意識海だった。全ての失敗と死を受け入れた意識海であり、過去と未来で異なる可能性のために戦っていた「リー」の意識海だった

それらは何かのきっかけで積み重なり、交錯して繋がり、目の前のこの混沌の空間を形作った

機体適合時に急に表れる意識海の過負荷や、その時一瞬だけ目にした場面の本当の源がここだったことを、彼はようやく理解した

この場所の存在理由はただひとつ、未来に関する「彼」の全ての記憶を封印するためだ

過去に向けて送ったメッセージは全て、唯一の未来へ導くためのものだった。しかし未来にいるリーは、情報を送り、それを受け取って起こしたリーの行動の全ての記憶を封印した

「偶然」という小さな手かがりだけを残し、リーを少しずつここに導いた

無数のリーが未来のために戦い、崩壊した時、もうひとりのリーは変数がもたらすバタフライエフェクトを阻止しようと、リーをここに引きずり込み、自分の手で自分を殺した

その瞬間、これらの記憶を通じて、リーは起こりうる全ての過去と未来を目にし、直感的にあらゆる情報をはっきりと目の前に出現させた

本来彼の記憶海はそんな膨大な情報量には耐えられないはずだが、ここでは他の世界線にいる「自分」の演算力を借りることができたようだ

そうすることで、彼は封印され、消去されたたくさんの記憶を思い出したのだ

それは、空中庭園のブリッジで武器を持った構造体に囲まれた記憶――彼らの目は赤い光を発し、全ての端末が同じ言葉を繰り返し再生していた

よく知るあの人が狂気の笑みを浮かべながら、ゆっくりとリーに銃を向けた

リーも銃を構えたが、トリガーを引くことはできなかった

それは、空中庭園が空から墜落した記憶――エデンは空気と摩擦を起こし、輝く流れ星となった。彼は燃える緋色の大地を疾走しながら、かつての仲間たちの胸を銃で撃った

しかし、結局は自分に差し出された手をつかむことはできなかった

それは、冷たい機械が大空と大地を覆い尽くす記憶――地球は枯れ果て、ただ鋼鉄と連なる焦土だけが広がる世界だった

グレイレイヴンの隊員は変わらなかったが、彼らはかつての指揮官を救えず、遺体を取り戻すことはできなかった

リーはまったく動けず、心からの友が戦うために去っていく後ろ姿を見て、全力で叫んだ。だが誰も応えてはくれなかった

それは、全てを埋め尽くす大雪の記憶――全ての命に災厄が降りかかり、あらゆる命が極寒の中、死に誘われた

この世界にパニシングの脅威はそれほどない。人々は永遠の冬の中で次々と倒れていく。少女が自分の魂を代償に救った未来も、終わりのない冬の闇に包まれている

周りにいくつものデータが現れ、人、あるいは不完全な人の形になった。それは無数の世界の「自分」だった。彼らはさまざまな表情で自分を見つめている

……僕は過去を変えようとして、よりひどい悲劇を引き起こしてしまった

最後まで……僕は一体何を救おうとして戦っているのかわかっていなかった

全ての人を救うことなどできない

これは僕からの忠告だ

変えられない過去に浸るな。「塔」に入る前に起きていたことを変えようとしても意味がない

塔に入って以降、存在する中から未来を探すんだ

僕はずっとそうやってきたはずだ

拳を握りしめたリーの目には自信があふれていた。まるで一度も失敗したことなどない、そう言っているように

全ての記憶がこの瞬間、彼の意識海で一体化した。全ての悲しみ、憎しみ、後悔が彼の一部となっていく

だが彼はまだ希望を抱いていた。自分の世界にはまだ無数の可能性があるはずだ。決まっていたはずのレールは「皆」の粉骨砕身の努力のお陰で、確実に変わっている

記憶の奔流の中で彼は「塔」のコアに隠されていた情報を手に入れた。それはすでに消えていた「リー」たちの最後の記憶に残されていた

彼ら自身の記憶が蛍火のように、リーが進むべき路を照らし出す

他の無数の世界で「リー」が伝えようとしたのは、悲劇的な過去や歴史を変えることではない。「彼」がやるべきことは、絶望的な未来を見ても確固たる意志で進むこと

幾千万もの戦いに直面しようとも、無限の未来で迷子になろうとも、前へと進む

この特別な意識海で彼は全ての自分を見た。どの体にも長期間戦ってきたことによる傷跡が残っている

数人の「自分」はもはやボロボロで、どれが誰かを見分けることすら難しかったが、彼らにはある共通点が存在していた

もう気付いていると思うが

白髪となった隻眼のリーが目の前にやって来た。彼の手中で何かが光っている。見ると、グレイレイヴンの認識票だった

リー(?)

どの時空にいても、あなたはグレイレイヴンの一員だった

リー(?)

運命がどう変わろうと、あなたは最終的にグレイレイヴンを選ぶ

リー(?)

だから……「あなたは、グレイレイヴンのリーでしか果たせない役目を、果たすんだ」

その認識票を見る彼の目はどこか遠くを見ていた。はるか昔を思い出し、彼には掴みとれない未来を見ているように

彼の顔にはリーとしてはおなじみの、他人行儀や悲哀といった表情はなく、温かく儚い微笑みが浮かんでいる。ガラスに反射した幻の太陽の光のように、淡いものではあったが

僕にはもうその機会が残されていないが、あなたはまだ戻ることができる。あなたを待つ彼らの笑顔を見るチャンスが、まだあるんだ

リー

あなたたちは?

すでに答えを知ってはいたが、彼はついそんな質問をした

もちろん僕には自分の戦場がある

僕の使命はもう終わったんだ

僕は戦い続ける

僕にはまだかなえていない願いがある

まだ伝えていない言葉が……

……会いたい人がいる

守りたい未来があるんだ

横にひとりのリーが現れた。塔の中で自分を助けてくれた「リー」だと、リーはすぐに気付いた。その姿は自分が最もよく知る機体だった

僕たちは意識海に投影された「幽霊」でしかない。塔自身は時間を超越できるが、我々の存在はやがて「ルール」によって抹消される

最終試験で「僕」は選別をクリアできなかったから

リー

選別……ルール?誰が何の権限でそんな「ルール」を作ったんだ?

僕も同じ質問をしたな

彼はやるせない表情をしていた。自分は上手く答えられない時、そんな表情をしていたのか

ふと、リーは考えた。グレイレイヴンやストライクホークと一緒にいた時、彼はいつもそんな顔をしていたと

……あなたはいずれ出会うだろう。その答えもあなた自身で見つける必要がある

あなたは自分が自分に仕掛けた謎を解いた。今からあなたは昔に戻ることはできなくなり、未来へ進むしかない

この意識海にもうひとつの記憶が残っている。これはとても重要な情報で、あなたが設定したタイミングで封印が解けるようになっている

チャンスは一度だけだ。僕たちがこの意識海を通して伝えたこの事実が、あなたの切り札になるだろう

その前に、上へ登るがいい。あの壊滅をもたらす光を止め、「塔」のルールを逆転させるんだ。そうすればあなたが大切に思う全てが救われる

最初の「リー」が全ての後悔と希望を未来に託すようにして、微笑みながら自分をそっと押し出した。同時に、リー本人の前に時の狭間が現れた

やり方はもう知っているはずだ。始めよう