Story Reader / 本編シナリオ / 20 絶海の異途 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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20-13 決別の時

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惑砂が海に落下しかけた時――海から大量の侵蝕体が現れ、惑砂を捕獲しようとしたビアンカを阻止した

この時、Ω武器の稼働率は最大に達しており、海に蔓延する赤潮もかなり抑制されていた

海にいる巨大な人型異合生物も人間に包囲され、劣勢に陥っている

もうすぐΩ武器の補充が足りなくなるぞ。とっとと最後の一撃だ!

カレニーナはイライラと怒鳴り声をあげた

私に任せてください、カレニーナ

海での戦いから帰還したビアンカが答えた

ビアンカ……!お前、怪我は?海底で何日も失踪してたらしいが、一体何があった!?

雨と循環液まみれの少年が残りの隊員を引き連れて、ビアンカに向かってうなずいた

さすが隊長……ご無事だったんですね

問題ありません、ご心配なく

ビアンカは残り僅かな粛清部隊を見渡した。数日に及ぶ異合生物との戦いで人数が大幅に減少し、戦闘経験の少ない少年が臨時隊長にならざるを得なかったのだろう

ビアンカは剣杖を握りしめ、前方の巨大な人型異合生物を見つめた――歪なその体は、すでにビルほどの大きさに膨張している

昇格者がセンの意識を人型異合生物の外殻に融合させたものです……あの中にセンもいます

海洋博物館を調査してた粛清部隊の副隊長?

はい、カッパーフィールド海洋博物館の崩壊後、私はセンに守られていました

あの海にいるバケモ……人型異合生物が守ったって!?

センは昇格者と最後まで戦い、殉職しました

周りにいた粛清部隊は全員、口を開くことができなかった。今までにない威厳とオーラを放つ隊長の姿に、彼らは初めて心からの畏敬の念を抱いた

フォン·ネガットはセンを人型異合生物の実験台にしましたが、センは完全にはあの怪物の養分にならず、今もまだ意識が残っています――

友達を殺すの?

だめだよ。友達に手を出しては……

彼女の泣き声が聞こえないの!

彼女の意識はすでに分裂していました。でも微かに残っている意識が、彼女を動かしました

――センとして残存していた意識が、私たちを守ろうとしたのです

イサリュス

あの膨らみ続ける化け物が、セン副隊長……?

……確実なことはわかりません。人型異合生物の進化のための本能的行為という可能性もありますが……私は彼女が助けてくれたのだと信じています

彼女にはまだ意識の欠片が残っています……

今は……もがき苦しみながら自らの命を断とうとしているのです

あの怪物は我々を助けてくれていた……?

その時、ビアンカの端末に通信要請が届いた……それは空中庭園からだったが、発信者の名前を見てビアンカは眉をひそめた

深痕……ようやく、魔女になるのを受け入れた?

……仰る通りですね。「魔女」はもう、私を構成する一部で……私の命の一環として存在しています

ですがゆめゆめ誤解なさいませんよう、私は決してその身分に縛られたりしません……この剣は、私の覚悟を証明するための存在なのです

ハ……好きにすればいい。ただ実験体自身の傾向について、こちらはまだ興味を持っている訳なので

その贈り物、科学理事会に頼んで特別に開発してもらったものなの。これからもしつこくあなたを観察するから、そのつもりで

そう話すとヴェサリウスは一方的に通話を中断した。その時、ドールベアは何かを思い出したのか、拠点の設備一覧をチェックし始めた

そうだ……ビアンカ、私たち工兵部隊が地上に行く時、科学理事会からあなたの装備を運ぶようにって頼まれてたの。あの女性、ビアンカにとって必ず役に立つと言ってた

それ、いつのことだよ……なんでオレは知らされてねーんだ?

それは……とても精密な装備みたいだから、暴れん坊に渡して壊されでもしたらたまらんと思ったんじゃない?

ドールベアは運んできた輸送ケースを探し出し、それを開けてみせた。中には――白衣を纏って身をすくめている男が入っていた

???

ひゃああああああああ!!

うぎゃあああああああ!!

箱の中から響いた突然の悲鳴に、横から開封を手伝っていたカレニーナもつられて絶叫した

エ、エイハブ主任……なんでこんな箱の中に……?

工兵部隊のふたりはしばらくこの男と一緒に仕事をしたことがある。彼は月面基地で彼女たちに協力してくれた黒野の科学者だった

びっくりしたぁ……侵蝕体がこじ開けたかと思ったよ

ドールベアは数秒ほど、彼がなぜここにいるのかを考えていた

ははーん……わかった。あの女性、あなたの上司なのね。月面基地で私たちを手伝ったペナルティで箱に詰められた、そうでしょ?

ははは……「零点エネルギーエンジンを壊した罪滅ぼしに、今回は緩衝材としてその贈り物を大切に守りなさい」って言われて……

エイハブは零点エネルギーエンジンの資料を持っていたため命拾いしたらしい。さもなければ黒野の常として「エイハブ」という存在ごととっくに消されていたはずだ

あの女性が言っていた「贈り物」って?

エイハブはコクコクうなずくと、抱えていた機械を取り出した

これは……補機か?設定はビアンカの深痕機体に合わせられているな

ええ、この補機が展開すれば、上に深痕を乗せての水面移動と低空飛行を実現できるんだ

それなら……センに近付ける……

指揮官殿、私と深層リンクをお願いします

センの最後の願いは、私の願いでもあります……この手で、彼女を葬ってあげたいんです

……彼女との約束なので

ビアンカがこちらを見る目は有無を言わせないほどに真摯なものだった

グレイレイヴンのメンバーの方を振り返ると、リーフは深刻な表情で、リーも唇をキッと固く結んでいた。だが反対の意はないことがわかる。ルシアも重々しくうなずいてくれた

理事会が母体の欠片を使って開発した装置があるなら、ビアンカの機体の戦力はここにいるほとんどの構造体を上回るでしょう

援護は私たちに任せてください!

ビアンカさん、どうぞご心配なく。私が指揮官とのリンク状態を見ていますから……絶対に深層リンクを安定させてみせます

イサリュス

私たちの中で一番副隊長のことを知っているのは隊長です……どうか、くれぐれもお気をつけください

くっそ……またビアンカをたった独りで戦わせるのかよ……

私は独りではありません

海岸にいる全ての人が、私の味方なのですから

結論、出たみたいね。じゃさっさと指令を出して!

皆の準備はできているよね

ご武運を、隊·長

パルマを見てビアンカはいつも見せていた笑みを浮かべた。機体の外見など関係ない、ビアンカはビアンカのまま――いや、今の彼女の意志は前より更に堅固なはずだ

よっしゃ……ドールベア!行くぞ!

カレニーナは端末に向けて怒鳴った

ビアンカ、ちゃんと戻れよ!こっちはおニューの機体をまだしっかり見れてねーんだからな!

はい、心得ています

――彼女はこれまで、死のうとするセンを引き留めていた。だが今度は……センを死なせてあげなければならない