Story Reader / 本編シナリオ / 13 終焉の福音 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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覚醒と壊滅

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地下深く

とうとう……このざまだ

ロランは深い縦穴の底に座っていた。壊れた配管から漏れ出る赤潮、そして真っ白な異合成物の死骸……

ロランは地面に落ちていた自分の左腕を拾い上げて左肩にあてがったが、またすぐに地面に戻してしまった

つながらないや。この程度の穴も登れないなんて。こんな無様は、空中庭園のあいつに追い詰められた時以来かな

……同じように穴の底で絶望した人間を、前にも見たような気がするな

でも、僕はあの時、高いところから見下ろしていたんだった

そもそも、こういう無茶苦茶なのは僕の柄じゃないんだから

せっかく人を信じたんだ、失望させないで欲しいな

ルナ様をグレイレイヴンのもとへ送り届ける……それでやっとスタートだ……次の一手を考えなきゃ……

今度こそ、彼女自身が本当に欲する物に気づいてくれればいいんだけれど

その前に……

少し……眠ろうかな

赤潮の奔流の中、ロランはそっと目を閉じた

集噛体の体の一部が落下し、偶然にも三角形の空間を作り出す。やがて空間を覆っていた物が消え、中があらわになった

そこには傷だらけの人間と傷だらけの構造体が、互いをかばいあうようにしながら倒れていた

???

……へへ、ひどいことになってるね

気絶するルシアのかたわらで空間が歪み、微かな音が鳴る。まるで見えない手がルシアの身体をなでているかのようだ

ルシアは眉間にしわを寄せて本能的に刀を握ろうとするが、まったく力が入らず、指一本動かせない

ルシアが持っていた真っ白なキューブが取り出された。キューブは一瞬発光すると、すぐに消えてしまった

???

これにて、任務完了!

……早く起きないと、崩れちゃうよ?

あーあ、面倒だし本当はこのまま帰りたいけど、なんせ脅迫されてるからね……

……

通信端末が通知音を鳴らしている。絶え間ない落石の中、ようやく目を開けた

目の前は……真っ黒闇だ

ルシアは思い出した。以前も疲れ切った身体を引きずりながら、同じような暗闇の中を歩いたことがある

生き延びるために

逃げるために

自分を待つ家に帰るために

だが、全ては破壊された。それなら今、自分は何のために進み続け、生き延びるのか?

あるいはただ、信じているだけなのかもしれない……

あと一歩進めば、誰かが言っていたあの「光」が見えるかもしれない

ルシアの最後の記憶は、ルナが集噛体のコアを破壊した際の強烈な光

それから……何が起きた?

ここは……

ルシアの記憶はまだ混乱していた

だがほどなく、自分が背負われていることに気づいたようだ

指揮官!?……今すぐ下ろしてください!

支援部隊支給の動力スーツのお陰で、なんとかルシアを背負うことができている

ですが……指揮官もひどい怪我を……

ルシアは振り向いた。背後では集噛体が崩れ落ちた石に埋もれていた

ルナは……?指揮官、ルナはどこですか?

離脱できたんでしょうか……それとも……

ルシアは再び振り返ったが、集噛体の残骸は答えを与えてくれなかった

だが、ルシアは何かを察したように黙り込んでしまった

突如、強烈な振動が起こる。あっという間に足下の地面が崩壊し、ふたりを飲み込こんでいく

指揮官!

落下の最中、ルシアは必死にこちらに手を伸ばしてくる。下には紅い奔流が見える……

???

こっちよ!

投げ込まれたロープをルシアが慌ててつかんだ

遠くのプラットホームに見えているのは、ブリギットと支援部隊員だ

ブリギット!?

索発射銃よ。まさかこんな骨董品が役に立つなんてね

手伝います。足場が崩壊する前に引っ張り上げなくては……

ルシア、指揮官!大丈夫ですか!?

ルシアはうなずくと、崩壊し続ける深淵を振り向いた

ルナ……

ルナの姿はどこにもない。まるで最初からいなかったかのように

地下空間が巨石に埋め尽くされるまで、ルシアはひたすら見つめ続けていた……