信号はデータベースから離れるようだ
V、どうする?
食い止めてみる。それと八咫、彼が離れたら記録を調べて私たちに必要なものを取って来て
自分のこと、指揮官らしくないとわかってるんでしょ?人間なのに、なぜいつも斥候とか暗殺みたいなことをしてるんだって
だったら何?
私たち、組んで仕事してどれくらいになる?
3年8カ月と12日。あなたがこの機体に変えてから……
死ぬ日を考えたこと、ある?
なぜ私がそんなことを考えなきゃいけないの?
ヴァレリアの言葉は反問ではなくきっぱりとした回答だった。八咫はもうそれ以上聞かなかった
アシモフ、八咫がブリッジ接続をします。何をすべきかかご存じですよね?
ブリッジ接続信号を受信した……これは!?
……何ですか?
いや……なんでもない
(なぜ数年前、お遊びで作ったデータベース乗っ取りプログラムの特性信号がここに?)
(スカラベ小隊が監視している「侵入者」は……空中庭園、しかも科学理事会に関わる者か……?)
何か起きたのですか?首席技術者
……任務を続けろ
……
何か……隠してないよね?
お前たちには関係ない
マーレイはデータベースのハッキングに成功した。情報がデータ体からマーレイの端末に流れてくる
識別ID確認……間違いなし。どうやらこれは長官のおふたりが欲しがっていたものだな
せっかくゲシュタルトのデータベースの最高権限を解除したんだし……このまま帰るわけにはいかないな
マーレイは手を動かして、データベースの中のファイルリストを目の前に展開させた
さて、キーワードは……「黒野(Kurono)」
5分の3のファイルが消えたが、残り5分の2はマーレイの前でいぜん巨大な長方形の配列を保っている
2つ目のキーワード……「構造体技術(Reconstructed Tech)」
残りのファイルのうちの3分の2が消え、残った3分の1は一日で読み終えられる量の配列になった
……全部持って帰ろうかな。でもファイルの転送だけでも、かなり時間がかかりそうだなぁ
うーん、じゃあ3つ目のキーワードを追加しよう
「ハセン」と「ニコラ」のデジタルサイン
このキーワードを入力後、大部分のファイルが消え、残ったのは10数件の「最高機密」と記されたファイルのみだった
みーつけた
マーレイはそれら全てを端末に転送した
――その時、背後から黒い影が襲って来たのに気づいた
……ちぇっ、やっぱりそう簡単にはいかないか……
マーレイは端末からひとつのデータ体を取り出し、襲撃者に投げつけた
――ギィィィィ!
データ体は爆発して電気ネットとなり、襲撃者の前で広がってその行く手を阻んでいる
お迎えどうも!ではお先に失礼!
襲い来る者とは逆方向に向かってマーレイは走り出した
バーチャル空間においては病変は浸入状態の意識体に表れないため、マーレイは珍しく――全力で疾走できた
全力疾走と電気ネット(遮断プログラム)で来襲者を遠く引き離した――少なくとも彼は、そう考えていた
そしてアクセス記録を削除したかどうかを忘れた――だが、どうせ確認する時間などない