Story Reader / 本編シナリオ / 12 九龍環城 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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12-26 憧憬

全て終わった

誰が言ったかはわからないが、確かに全てが終わった

街は悲惨な状況だった。建物は大半が大破し、瓦礫が通りを塞いでいる。パニシングも拡散していて、一部のエリアでは移動すら困難だ

だが、この混沌もやがては収束するだろう。昇格者は去り、再構築した防衛線によって侵蝕体も駆逐された

一部の小隊は直接地面に横臥し、つかの間の休息を享受している

……

九龍の兵たちは部外者を追い立てることなく、かといって謝意を表すでもなく、ただ横目に見ながら、各自の持ち場へと向かう。どこか、会話の糸口を探しているようにも見えた

少し離れた場所には、支援に駆けつけた他の組織の面々がいた。彼らこそ形勢逆転の要であったが、その表情には勝利の喜びが見えない

1名の連絡員が駆け寄ってきた。ひどく慌てた様子の連絡員が持ってきたのは、極めて重要な情報だ

ルシア

ゲシュタルトについて、でしょうか?

ルシア

どうやら、重要な情報のようですね

大丈夫です……

華胥は結局、昇格者に奪われてしまった。彼らの深刻な表情の原因はそれだ

これから空中庭園は何をすべきか。昇格者たちは華胥を使って何をするのか。ここにいる誰もが、次に直面する問題だ

ルシア

指揮官、私たちは最善を尽くせたんでしょうか?

ルシア

……私は決して後悔しません

ええ……勝利できなかったのは、私たちの力が及ばなかったから……

指揮官……

ルシアが目を覚ましたのは、皆で機体を担いでここまで撤退してからだった。リーとリーフが、ルシアを静かに下ろす

ルシアの機体は動作不能の状態で、拙い目線をこちらに寄越すことくらいしかできない

ルシア

戦闘を終わらせて、指揮官に背負われて……こうしているだけで十分です

……少し怖いことに変わりはありませんが

怖いんです……自分自身を知っていくのに、一体どれだけの時間を費やすのか

……指揮官……お名前を呼んでもいいですか?

ルシア

[player name]……

[player name]、[player name]……

[player name]

安心……するんです……

[player name]……

[player name]

ルシアは繰り返し名前を呼ぶ。抑揚を変え、速さを変え……宝物を愛でる子供のように、ひたすら名前を呼び続ける

ルシア

指揮官はおかしいとお思いでしょうけど……これは、恐怖を乗り越えるための……おまじないなんです……

散々名前を呼んだルシアが、心持ち寄り添ってくる。それから、何もかもをこちらに預けるようにして、再び話し始めた

ルシア

指揮官……次の私は、どんなルシアになると思いますか?今までみたいに……生真面目……?それとも、リーフみたいな……恥ずかしがり屋……?

できれば私……アイラやカレニーナのようになりたい……彼女たちのように……素直に自分の気持ちを伝えられたら……

ビアンカのように……凛として隊を率いる……素敵な女性もいいですね……

ナナミにソフィア……あのふたりは極端ですから……あんな風になってしまったら、私、どうなっちゃうんでしょう……

ルシアはおしゃべり好きの女の子のように、ただただ話し続ける。まるで悲劇も、災厄も、何ひとつ知らないかのように

純粋で、幸福で、明日への希望に満ち溢れた女の子のように

もし世界にパニシングが出現していなかったら、ルシアはそういう女の子だったんだろうか――誰にもわからない、益体もない問いだ

この世界に「if」などありえない。自分たちが知る一切が、どうしようもなく真実なのだ

ルシア

でも、どうなったって、きっと大丈夫……だって、指揮官がいるから

それに……意識海の中に、自分だけの、私だけの思い出ができたんです……

また自分を知って……自分自身を証明できた時……きっと、今よりもっといいルシアになれる……

ルシア

……では、またあとでお会いしましょう。指揮官

しばしの別れの挨拶に、彼女は優しく言葉を紡いだ

ルシア

ええ