Story Reader / 本編シナリオ / 12 九龍環城 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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12-24 檻の主

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あと少しで塔の最上階です。それにしてもここ、夜航船内部と何やら似ていますね……

夜航船が塔に似せられているのです。空中庭園の方々、お取り違えないよう

悠然と階段を降りてくる女性の名は、曲。夜航船の支配者と同じ名を持ちながらもまったくの別人である女性が、王者の風格を漂わせながらゆっくりと歩み寄る

そしてここは「天文台」。単なる「塔」ではありません

空に輝く星々を真近に見られるよう、この「天文台」は高く高く建てられたのです

星が見たければ宇宙に行けばいいのに。よく見えるわよ?

そのような行いは傲慢にすぎます

地上より星々を見上げてこそ、我が身の小ささを知れるというもの

我々は悠長な天文談義のために来たんじゃありません。今の九龍の状況、わかってるんですか?

戦況は予断を許さないし、昇格者も侵入している。一刻も早く華胥を保護しなきゃいけないわ。アレを昇格者に渡すわけにはいかない……

もちろんです。どうぞご心配なく

いいえ、存じ上げませんね

ってことはセーフね、よかった……

……

リーフ?……様子が変よ?どうしたの?

曲の返答に安堵を浮かべたアイラとは対照的に、リーフの表情は見る見る厳しさを増していく。その手は忙しなく機器を操作していた

リーフ、どうかしたんですか?

まさか、そんな……曲……九龍の支配者、曲は……しょ、昇格者、です……

嘘でしょ?昇格者がこの街を支配してるってこと?

本当です!何度も確認しました……

見間違いかと思って、何回も……でも、αやロランと同じ反応なんです。何度やっても曲から同じ反応が……!

一体どういうことだ……曲が昇格者なら、この戦争は一体何なんだ?我々を集めるための罠か?

私も昇格者も、それほど暇ではありません

その言い方……あなたたちは仲間じゃないんですか?

同じ昇格者だから仲間、ということにはなりません。当然、昇格者が人の住まう街を統治してはならないという決まりもない

私は少々特殊な存在なのです。パニシングを拡散しないようこの天文台に閉じこもり、ここから九龍の全てを支配し続けている……

曲は微笑みを浮かべたまま、武器を握って近づいて来た。アイラが息を飲み、静まり返った塔内の空気が緊迫に張り詰める

九龍コーポレーションは現在の地球、地上に存在する一切の価値ある物を可能な限り保全しようとしています

私は人々の願望を映す鏡。地球保全という理想のために最善を尽くしているだけ

地球、保全……?

空中庭園も同じようなことをしているでしょう?文物、旧時代のデータ、そしてそれらに関連する物を回収している

……私たち世界政府芸術協会がやっていることだわ

私たちに比べれば、そちらは児戯のようなものですけれど

なんですって!?こっちだって文化復興のため、皆身を粉にして働いているわよ!いつか地球を取り戻したら……

そのような日は、未来永劫訪れません

え?

空中庭園のいう地球奪還など、ただの絵空事。再び皆が手を取り合うことは不可能なのです。パニシングが爆発した日、地球の歴史は終焉を迎えたのですから

それを悪あがきというのです。このような状況で、あとどのくらい地球がもつとお思いですか?

歴史の一部……地球がこうなってしまってもまだ、人間は営みを続けられると思っているの……?

愚考と言い捨てるのはたやすいけれど、それだけではない意志を感じるわ……名乗りなさい、空中庭園の指揮官

[player name]。せめてのはなむけとして、その名を目立つ場所に刻みましょう

はなむけ?

人の命はいつか散り、機械もいつか動きを止める。世が無常であるからこそ、価値ある地球の全てを、この九龍に集め、保全すべきなのです

地球の灯りが潰え、闇が全てを覆いつくしたとしても、この地は永遠に輝き続け、いつか時空を超えて訪れる者たちのしるべとなるでしょう

恐竜の化石のように、未来の何者かが「人類」の痕跡をたどるための「万世銘」を残す。それこそが九龍の役目なのです

「万世銘(バンセメイ)」……

そうです。それゆえに、あらゆる争いは無意味。美しき死を受け入れずして、誰が地球の統治者といえましょうか

私は悟ったのです……「万世銘」を残すためには、一度誰かがこの世界を終わらせなくてはならない

まさか……?

そこまで来ている昇格者のための出迎えでしたが、構いません

地球の終焉はもはや定められた未来。誰が最初の礎になるかは些細なことです

あなた方の「歴史」の幕を……私が直々に下ろしてあげましょう

衛兵

——

下の階から大量の守衛です!

やっぱり、待ち伏せしてたわね!

指揮官、ここは僕たちが抑えますから、早く上へ!

今の最善の方法というだけです……上に行けば、後方部隊が救援信号を捕捉してくれるかもしれない

そうよ!ハセン議長がきっと増援を送ってくれるわ!

とにかく走ってください!振り返らないで、指揮官!!