——ごぁは!!
自我を失い、侵蝕体へと成り下がった禄存が街中を徘徊している。その身体はひどく損傷し、手に持つ武器ももはや残骸同然だ
容赦するな!あれらも標的に加えろ!
だが、依然として理性を保ち続ける守衛は、自らの体躯を最後の防衛線として光壁の前に立ち塞がり、蟻一匹も通さない構えだ
……なんで逃げないの?「命あっての物種」って言葉を知らないのかな?
九龍衛兵の辞書に逃走という言葉はない。昇格者よ、貴様がここを通ることはできぬ!
そう……なら悪いけど、もっとたくさんのパニシングで侵蝕するしかない……
口では悪いと言いながら、その実ラミアは一片ほどの同情も持ち合わせていなかった。ラミアは、爆弾とするのにふさわしい侵蝕体を見繕い始める
えっと……
おおっと動くなよ、昇格者!!
突如、ラミアの目論見を妨げたのは、空から飛来した大剣だった。続いて、その漆黒の大剣の持ち主であるカムイが落ちてくる
ええ……どういうこと……なんであなた、平気で立ってられるの……
なんでって、そりゃあ「あいつ」が助けてくれてるから
ラミアが何に驚いているのか、カムイにはすぐにわかったようだ
ラミアのパニシングは恐ろしいほどの高濃度だ。普通の構造体であれば、10秒と経たずに機体システムが崩壊しているだろう
だが、目の前の構造体はまるで平常濃度のエリアにいるかのようにピンピンしている。構造体は、底意地の悪い笑みを浮かべて、地面に刺さった大剣を引き抜いた
もしかして……ロランが言ってた、カムイとかいう……
あいつに話題にされても、これっっっぽちも嬉しくないな!まあ自己紹介の手間が省けて良かったぜ。じゃあ早速だけど、死んでもらうぞ昇格者!
……私を守って!
最も得意な戦術を使えないのなら、別の手段で対抗するまで――ラミアは侵蝕体の群れの中に飛び込んだ
隊長!
……照準良し、発射!
クロムの弾丸が、狙い通りラミアの腕に命中する
私の腕……めちゃめちゃ悩んだ末に選んだ腕が……
そのまま2発、3発とおとなしく受けてくれると助かるんだが
いつまでも黙って撃たれてると思うな!
へへ、こんなにうまくいくとは思わなかったぜ
飛来する弾を警戒すれば、近距離の守りが疎かになる。そして、カムイの瞬発力はラミアの想像を遥かに凌駕していた。瞬時に侵蝕体を飛び越えたカムイが、ラミアの真正面に立つ
重い剣戟が唸りを上げる。カムイは大剣を力任せに振り上げ、ラミアを一刀両断にしようとした、が――
!!!
肝心のところで、カムイは手を止めた
う……
あら?なんで止めちゃったの?
昇格者は、いまだ意識を維持したままの構造体を盾にしていた。構造体は危険な状況だが、かろうじて侵蝕されていないようだ
侵蝕されちゃってるならまだしも、まだ侵蝕されてないお仲間に手は出せないよね?ましてや、救える可能性がある仲間……
あなただって、仲間に助けられたことがあるんだもんね
卑怯だぞ!そいつを放せよ!
ちょいっとパニシングの量を調節するだけなんだから……ルナ様に教わったの。昇格者なら誰でもできるって思わないで
こいつ……カムイ、仲間を優先するぞ!
了解!