今だッ!!
全隊、ただちにコアエリアから撤退!!
…………
発射ッ!!!
空中庭園の司令室で待機していたカレニーナが、発射ボタンを必要以上に強く叩いた
鈍重な音とともに、一筋の眩いビームが中継衛星へ向かって射出される
発射の衝撃で、空中庭園の位置が少しずれるほどの勢いだ
ビームは中継衛星に備えられた特殊レンズを通過すると、屈折して地平線を回り込み、宇宙ステーションへと一直線に伸びる――
数秒後――
……来ました!
ズバアァァァーーーンッッ!!!
……高エネルギービームは重力室を貫通し、異重合体コアへと命中した
異重合体のコアは激しく焼かれ、表面物質もまた、気化し、昇華していく……
その瞬間を……空中庭園とオブリビオンの部隊はただ見守っている……
終わりましたか……
…………
い、いえ、これは!!
やがて炎の勢いも収束し――
徐々に暗さを取り戻し、明瞭になった視界には……
真っ赤な外殻が剥がれ落ちた異重合体コアが、依然として重力室の中央に鎮座している。剥き出しとなった赤黒い立方体……
緻密で滑らかな立方体の表面には……掠り傷ひとつない……
これが……正体のようですね……
……
ど、どういうことだ!?皮一枚剥けただけかよッ!?!?
これまで調査隊が観測してきた異重合体の物理性質は――
ほとんどがこいつの偽装だったってわけだな……
な、なんだよ……お、おいッ!?グレイレイヴン、2発目だッ!!2発目もチャージ終わってるぞッ!!
間に合わないだろうな
ビームの衝撃を受けた宇宙ステーションは、ゆっくりと回転し始めていた。異重合体コアはもう、中継衛星の照準から外れてしまっている
そして重力室内部では――
目標の質量……再凝集……
どうしましょう……指揮官……もう打つ手がありません……
ええ……
牽制し続けましょう……
必ず、次のチャンスがきます
宇宙ステーション全体の緩やかな回転に合わせ、重力室の「天窓」の景色も変化する
またエネルギーを生成し始めました……目標底部にエネルギーが集まっています……
何をするつもりなんでしょう……
……
この状況、もしかして……
……まずいぞ!!
その時、太陽光が真っ青な地球に反射し——重力室の天窓から射し込んだ
まさか……
……
衝撃波が異重合体コアの底部から広がる
異重合体コアは重力室の風穴から飛び出した。周りの物質を取り込みながら、自らを宇宙ステーションから放出したのだ
母なる大地――地球へと向けて
……
すぐに動いたのはワタナベだ
オブリビオン、ただちに撤退だ!
了解!
ワタナベさん、撤退ルートは送信済です!
ワタナベは身を翻し、重力室の外へと走り去った
ワタナベ……
重力室に残された空中庭園の者たちは……ただただ呆然としていた……