カム……
あら、ごめんあそばせ!
グレイレイヴンの皆さん
またしても、私の方が早かったようね?
ヴィラは指先で赤い髪をかき上げる。まるで算盤を弾いているかのようだ
侵蝕されたストライクホークの隊員……長い間、目をつけていた獲物なのよ
あなたと争うつもりはありません
カムイにいくつか訊きたいことがあるだけです
その後の処置はお任せします
……そういうことなら
言っておきますけど、下手に引き延ばしても無駄よ?他の粛清部隊の隊員が到着してしまったら……おわかりよね?
……
カムイ……いつ、侵蝕されたんですか?
ロ……ロランの……時に……
どうして、教えてくれなかったんですか?
言ったところで……仕方ないだろ……
逃げた理由は?恐怖ですか?
違う……ただ……体の中のパニシングを消したくて……
そんな……方法なんてないのは、わかりきっているでしょう?でなければ、人類がこれほどまでに犠牲を払うことは……
説明できない……俺もよくわかってないから……賭け、なんだ……
カムイ……
ずいぶん仲がいいのね。特別に、引導を渡す役目を譲って差し上げましょうか?
獲物の生死は問いませんもの
いい加減にしろよ、性悪女
……
ルシア……
うっ……!
……
過去……
過ちは……終わらせなければならない……
哀れな……
……
(なぜ……今あれが思い浮かんだのか……)
……カムイ……あなたを信じます
可能性があるのなら……最後まで……
そう言って、ルシアは刀を収めた
ふん、とんだお涙頂戴ね……結局、私が終わらせるしかないようね
待ってください
止めるの?言っておきますけど、粛清任務の妨害は反逆行為よ?
いいえ……止めるのではなく、要請します
はぁ?
いつかの「手伝う券」のこと、覚えてますよね?
あなたが約束を守ってくれるなら、今ここで使いたいんですが……
……
…………
心底がっかりね
もっと面白いことに使うと思ったのに……たとえば……
……いいえ、結構よ
……
せっかく早起きしたのに……リーの甘ちゃんのせいで、興醒めもいいところだわ……
ヴィラは翻身すると、猫のように伸びをした。そして、大きく一息吐いて、振り返りもせずに去っていく
ハイヒールでガツガツと鋼板を鳴らしているあたり、不機嫌ではあるようだが
……この件から、私は手を引きます
あなたたちはせいぜい、見苦しく足掻くといいわ。それでは、御機嫌よう