…………
完全に……沈黙しました……
なぜでしょう、言葉では言い表せない悲しさを感じます……
私たちは任務を達成しました。それ以外のことは、考えないでおきましょう
……
……予定通り、記憶を取り出しましょうか
始めます
通信接続中――
グレイレイヴンの皆さん、聞こえますか?
ハセン議長より、一時的な任務停止の指令です
輸送機をあなたたちのポイントへと向かわせていますので
輸送機の到着後、速やかに搭乗のうえ、空中庭園に帰投してください
ハセンさんからの命令?
空中庭園へ……戻る……
どうした?こんなところで呆けていても、意味ないぞ?
手術でもあるまいし、お前は心配しすぎだ
ここは指揮官のお前が勝手に入っていい場所ではないが……そんなに心配か?ここまで構造体の身を案じる指揮官は初めてだ……
その思いやりが、戦闘の足枷にならないよう願っておくよ
……お前の懸念の通り、ルシアに発生した視覚異常は、極めて特殊なモノだ。ただ、詳細についてはコメントを控えさせてもらう
高レベルの機密事項に引っかかったからな
お前はグレイレイヴンに割り当てられた、単なる指揮官だろ?
権限も何も、俺は地球奪回戦線科学理事会の主席技術者だぞ。マインドビーコンの発明者として操作マニュアルにも紹介されてただろ?まさか見てないわけないよな?
何にせよ、科学理事会の上級実験エリアは科学者やリーダークラスの縄張りであって、兵士が来るような場所じゃない。本音を言うと、さっさと出て行ってもらいたいんだが
お前が、戦士と科学者とリーダーの役割を同時に全うした「あの方」であれば、目を瞑ったんだがな。俺が子供の頃から崇拝している「あの方」であれば
だが、「あの方」には決してお目通りが叶わない。時代が丸々ひとつ離れてるんだ、どうやったってもう、この世にはいないだろう
——とまぁ、雑談はここまでにしておこう。ルシアの意識がオンラインになるのは、5分後だ。わかったら出ていけ
はぁ……兵士というやつは身体だけ頑丈で、脳ミソは空っぽなのか?いい加減にしないと上層部にタレ込むぞ?
……
……
おお、アシモフ。ルシアと例の構造体の件だが……
実験エリアのゲートに、ただならぬ空気を纏う大柄な男が現れた
おや……君は……
司令官を目の前にして、敬礼のひとつもないとは関心せんな
ふん、今は若年者の指導に時間を費やす暇はない……君は上官ともども、のちほどレポートを提出しろ
ここは、君のいるべき場所でない。早急に出ていけ
ハーイ、グレイレイヴンの指揮官さん?ようやくお目にかかれましたね
あら……どうしました?実物の私はそんなに珍しいですか?
控えてくれ、セリカ。お前のおもちゃにするために、グレイレイヴンの指揮官を呼び戻したわけではない
了解です。ハ·セ·ン·議·長
かといって、標的を私に移されてもな……その呼び方には慣れないと言っているだろう?
ふふ。わかってますよ、ハセンさん
はは、手のひらで転がされっ放しだな……さて指揮官、本題を進めよう
我々はグレイレイヴンの動向に注目してきたが、君の実績は素晴らしいの一言に尽きる。グレイレイヴンを君に託したのは、正しい選択だったようだ
任官時に説明した通り、グレイレイヴンは極めて特殊な小隊だ。現時点では君に話せない事情も多い
今言えるのは、試練を迎えた時にこの言葉を思い出してほしい、ということだけだ。人類の命運は、君たちにかかっている
より多くの経験を積み、強固な信頼関係を築けば、君たちは「事情」などでは揺るがない小隊となる。それを忘れず、胸にしまっていてほしい
この機会に、スプレーマシンの記憶から明らかになった事実についても話しておこうか
では、おふたりはこちらへ……