記憶データを読み込み中……
シミュレーション映像を生成します……
…………
報告します。前方の侵蝕体は全て片づきました
今回の作戦は思ったより楽ですね。撤退した小隊の報告とは全く違いますよ
見てください、路肩の侵蝕体は落書きの前に集まってぼーっとしているだけです。警戒も攻撃性も見られない……
不気味ではありますが、なんてことはありませんよ
……あの落書きは侵蝕体の意志を束ねている
意志を束ねている?侵蝕体に意志などないはずでは?やつらはパニシングの操り人形でしょう?
こいつは普通の落書きじゃない。侵蝕体を引き寄せている以上、何か共通する「意味」があるはずだ
パニシングの侵蝕体は、人類抹消以外に興味がないと研究で証明されている。なのに、この状況は……落書きの「意味」が、パニシングの影響さえも超越しているということ……
これは……何らかの自由意志の体現かもしれない。すぐに司令部へ報告を……
待て……お前たち何をしている!?
落書きの温度が極度に低く、通行に影響がありそうなので処理しようかと……
馬鹿野郎がッ!!すぐ中止し――
ギギ……イし……かイほウ……
ギギ……キカい……ジユう……
落書きに集中していたはずの侵蝕体が、一斉に構造体小隊へと視線を向ける
クフフ……
クフフフ……
なんだ……あれは?霧を放出して……何!?探知システムが全て無効に……!
私ノ作品ヲ……評価デキナイトハ……人間ハ愚カデス……
破壊ハ……絶対ニ……許サナイ……
ギギィ――!!!
うあぁ、一斉に襲いかかってきた!?
怯むな!!隊列を維持しろ!!
何か投げてきたぞ……これは、スプレー缶……?
しまったッ!!!
(爆発音)
…………
シミュレーション、終了です……
……
……
映像の中の機械は……
落書きの制作者に間違いありません
クフフフ……大当タリ……デス……
人間……人間ノ意識ハ……ヤハリ……嫌イ……
……噂をすれば、現れましたか
……!?近くにいたのですか……まったく気配を感じませんでした……!
映像でも探知システムが無効化されたと言っていましたが……まさか自分の身を隠すために……構造体の循環液やパーツを利用したのか……
人間ノイナイ世界ハ……自由……創作……好キ……
人間ハ……地球ニ……戻ッテハ駄目デス!
人間ハ嫌イ、人間ハ嫌イ!
プシュ―――――
指揮官、危ないっ!!
パチュンッ!!
うっ……?なんだ、ただの塗料なのか?
リーのコートが塗料で色鮮やかに染まった
クフフフ……君ハ言ッタ……私ノ作品ヲ……ミ……醜イト……
貴様ッ!!
リーが追いかけようとした瞬間、謎の機体は大量の霧を噴射して全員の視界を遮断した